【マッド・マックス1】狂気と爆音の原点を劇場で観た男の回顧録

視聴覚の墓場

【マッド・マックス】1作目レビュー|最高に狂った映画を、劇場で観たあの日

※注:2025年現在、Amazonプライム・ビデオ配信中の「マッドマックス1」は、筆者が確認した限りオーストラリア英語のオリジナル音声版です。

◆リアルタイムで観た「マッドマックス」

私はもう立派なおっさんである。そんな私が「マッド・マックス1」を映画館で観たのは、たしか8歳のときだった。子どもが観るには過激すぎる内容だったが、それが私の人生を決定的に変えた。以来、私は過剰なもの、過激なもの、大げさなものに惹かれるようになった。

当時はR指定もなく、地方の古びた映画館で上映されていた。まるでタランティーノの『グラインドハウス』のような空間で、座席も自由、時間も自由、二本立て上映が当たり前という映画天国。情報源は「スクリーン」などの雑誌や、雨風にさらされた道路沿いのポスター看板だけだった。

◆CGなし、ガチのカーアクション

当時はCGなど存在しない。すべてが生のアクション。 それまでにもカーアクション映画はいくつか観ていたが、「マッドマックス」の異常さは桁違いだった。

タイヤ接地面すれすれのローアングル、吹き出す爆音、どこか狂気をはらんだ登場人物たち。ド田舎の劇場がこの映画のために初めてサラウンドを導入したのだが、その音響体験は、今でも思い出すだけで背筋が震える。

◆絶叫するナイトライダーと黒い車

冒頭、ナイトライダーが絶叫しながらボロ車で暴走する。あのシーンで観客は一気に引き込まれる。暴走族のボス・トゥーカッターは、後年『フューリー・ロード』でイモータン・ジョーを演じた俳優である。

主人公マックスは、妻子と親友を殺された怒りから黒い特別追跡車インターセプターで復讐に走る。その車のスーパーチャージャーがボンネットから飛び出す姿──最高に痺れる。

私はこの車とナイトライダーに惚れ込み、20代で中古の黒いトランザムを買って乗り回した。「マッドマックスに出てくるような車」に、一度は乗ってみたかった。

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【ファイヤーバード・トランザム】の思い出

◆原音じゃないと意味がない

近年の配信版は、役者の声が吹き替えやリマスターで変わってしまっている。オリジナルを知っていると「誰だよコレ」状態だ。特にナイトライダーやババ・ゼネディ、ジョニー・ザ・ボーイなどのセリフ回しは原音の迫力が段違い。

もし本来の「狂気」を味わいたいなら、10年以上前のDVDを探して観てみてほしい。ナイトライダーのしゃがれ声の絶叫、あれは忘れられない。

◆監督ジョージ・ミラーの世界観

ジョージ・ミラー監督は、単なるアクションではなく“誇張されたリアリティ”を巧みに描く作家だ。登場人物の濃さ、現実離れしたディテール。シリーズで有名な「マッドマックス2」の架空世界も見事だが、その萌芽はすでに1作目にあった。

たとえば、インターセプターを披露するシーンでは、役人がスーツの上に剣道防具を着て竹刀を持ち、面をかぶって立ち去る。意味はよくわからないが、この“過剰な世界観”こそマッドマックスの魅力である。

◆3作目はやや蛇足…?

『サンダードーム』(3作目)は、正直あまり好きではない。ハリウッド進出を狙ったエンタメ色が強すぎて、本来の“狂気”が希薄になっている。とはいえ、シリーズとしての地位を確立した意味では重要な作品だったとも言える。

◆マッドマックス=メル・ギブソン?

長らくマッドマックスといえばメル・ギブソンだったが、最新作『フューリー・ロード』でその座を引き継いだのがトム・ハーディー。見事なアップデートだった。

“Mad Max”というタイトルは直訳すると「狂ったマックス」。だが、彼の内面は市民を守る優しい警官であり、そこにこそギャップと魅力がある。

クールで無慈悲、だけど弱き者を命がけで守る。それがマックスなのだ。

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