【ブレードランナー2049】ネタバレなしレビュー|ライアン・ゴズリングが魅せるSF映画の到達点

視聴覚の墓場

【ブレードランナー2049】鑑賞直後レビュー|映像・音楽・感情に酔いしれる傑作SF

ついに、この日が来た

這ってでも観に行くと決めていた。1年以上前から、待ちに待った『ブレードランナー2049』。

公開翌日、地元の劇場で字幕版が始まったと知り、即座に鑑賞を決行。入場アナウンスの「ただいまから『ブレードランナー2049』の入場を開始いたします」という言葉に、思わず胸が高鳴った。

上映時間は3時間近くあったが、一度もトイレに行きたくならなかった。というより、それを忘れるほどに夢中になったのだ。映像と音響に貪欲に喰らいつき、ただひたすら没入した。

あらすじ:レプリカントが追う、過去と魂の記憶

物語の主役は、ライアン・ゴズリング演じる新型レプリカント「K」。人間に逆らわないよう設計された彼は、同類である旧型レプリカントを狩る〈ブレードランナー〉として働いている。

だがある日、彼は「レプリカントが子供を産んだ」という驚愕の真実に触れる。それは人間と機械、魂と記憶の境界を揺るがすものだった――。

物語は、かつてレイチェルと共に姿を消した〈前作主人公デッカード〉(ハリソン・フォード)と、その失われた子供の謎を軸に進んでいく。

ライアン・ゴズリングという存在

とにかくライアン・ゴズリングが圧倒的に渋い。

無表情の奥に爆発寸前の感情を秘めたような演技。彼が立っているだけで、スクリーン全体の空気が張り詰める。この作品の核はまさに彼であると確信した。

デッカードの帰還

前作の主人公デッカードも登場する。年老いた彼が物語のカギを握る存在として現れるが、正直なところ「彼は必要だったのか?」という気もした。

ただし、前作でレイチェルと逃避行に出たという設定を引き継ぐ以上、彼の存在はやはり不可欠。物語の継続性として納得できる。

AI「ジョイ」が切なすぎる

この映画で最も心に残ったのが、Kの恋人である人工知能「ジョイ(Joi)」。

家庭用ホログラムAIである彼女は、「joy(喜び)」を商品化した存在だ。Kは彼女を屋外でも投影できるポータブル装置を贈る。この瞬間から、ふたりの恋が現実と幻想の狭間で交差していく。

特に印象的だったのは、Kが自分の記憶の真偽を確かめに、彼女とともに産業廃棄物の山を越えて孤児院へ向かうシーン。夜の雨の中を飛ぶ車と、物憂げに浮かぶジョイ。その静謐な風景に、なぜか涙が流れた。

音楽の魔力

この映画、音楽がヤバい。

ヴァンゲリスによる前作のテーマが名高いが、今作も全く負けていない。音楽が映像と一体となり、未来の孤独と美しさを描き出している。

普段サントラはあまり聴かない筆者も、即Apple Musicでダウンロード。これは本当に素晴らしい。ぜひ体感してほしい。

惜しいのはクライマックスの戦闘

唯一気になったのは、終盤の戦闘シーン。

防波堤のような場所で、Kと敵レプリカントが繰り広げる死闘。水没する車の中で、手錠をかけられたままのデッカードが何もできずに沈んでいく。スケールのわりにやや地味な演出だと感じたが、全体の完成度を損なうものではない。

総評:映画人生の頂点のひとつ

間違いなく、筆者の映画人生の頂点に君臨する作品。

観終わった瞬間に「もう一度観たい」と思った。実際に2回鑑賞したが、それでもまだ足りない。

この作品が描くのは、人の記憶・魂・孤独・愛・生命の意味。それらは誰しもが無意識に抱えている問いであり、それゆえに飽きさせず、心を深く揺さぶってくる。

雨の中、涙のように消えていく命──前作でルトガー・ハウアーが言い放ったあの名セリフ:

“All those moments will be lost in time… like tears in rain.”

『ブレードランナー2049』は、雨と涙の美学を映像に焼きつけた、唯一無二のSF映画である。

視聴リンク

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