"The complete book of Enoch"なる本を、これで一読できたのであるが、これは私の”The best book" オブ・洋書の一冊に入る。The best book of 洋書の条件は、読むのに辞書引きや文体解読などの労力が大してかからず、かつ最大限の効果のあがる読書体験をいう。
これに入る本として、他にナグ・ハマディ文書のコンプリート版があったが、"The Complete book of Enoch"はこれに匹敵する。価格わずか千円ちょい。
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第三
「第三エノク書」はヘブル語エノク書のことである。読後の感想としては、ヘブライ版ナグ・ハマディ文書といった印象が強かったことである。"Metatron"という天使が作者であるラビ・イシュマエルに語りかけるという形で本は書かれている。
正典の旧約聖書と異なり、簡易な表現の内にヘブライの聖なる教えとエジプト的秘儀の文体の融合が見られ、作者は絶対にエジプトで何か学んだ人だと思われる。そのグノーシス的なスタイルが”異端”として正典から排斥された所以であろうか。学のない筆者には知る由もない。
カバラ
ナグ・ハマディにも誰でもそれらの数字が只事ではないことぐらいは知っている数字は出る。だがそれも365がいいところだ;しかし「第三」はヘブライ流だけあってやはりカバラな数字がふんだんに登場する。
これらの奇怪な数字について何事か知識を得たいと思い、「ゾハールの書」の購入を検討したが、なんとこの本は10冊以上のヴォリュームがあるらしく、読んでる内に死ぬおそれもあるのでとりあえず断念した。人にはそんなに時間は無いのであるから。
奥義
最も聖なる奥義をここに大胆に書くとすると、こういうことである。すなわち”世界を創造した言葉についての秘密”というわけであるが、本の最後に神は女から生まれた人間、つまり不浄な精液の一滴から生じた骨と肉に、これらの秘密を明かしたことを忿怒する。
結局怒りは何とか鎮まるのだが、言葉は元来、天界にある霊的な原型が可視的になったものに付いたそれぞれの名前なのだ。だから世界を創造した聖なる言葉は、ブランド・ショップの服の名前とかロック・バンドの名前や、ポップスの歌詞とは異なるのである。
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