星と月がつなぐ風流な夜
仙台の夏から秋の夜空
暑い夏も終盤になるころ、宮城・仙台の夜空に変化が現れます。北緯約38度の仙台では、夏の間は湿った空気で雲の多い日が続きましたが、9月に入るとようやく空が澄んできます。夜半過ぎには南東の空に木星が明るく輝き、その下に赤く目立つ蠍座の一等星アンタレスが隠れるように見えます。さらに南の低いほうには射手座でかすかに光る土星もあり、東の空には満月に近いお月さまが昇っています。これからしばらくは、虫たちが最後の命を謳歌する中、涼やかな夜風に秋の星たちが清々しく照らす季節です。
中秋の名月:意味と今年のずれ
「中秋の名月」とは、太陰太陽暦(いわゆる旧暦)で秋の真ん中にあたる8月15日の夜に見える月のことを指しますnao.ac.jp。平安時代に中国から伝わったこの習慣では、旧暦8月15日の満月を愛でながら収穫を祝いました。秋の農作業と結びつき、「芋名月」と呼ぶこともありますnao.ac.jp。
今年(2025年)は、旧暦の8月15日に当たるのは新暦の10月6日で、その夜が「中秋の名月」になりますnao.ac.jp。しかし天文学的な満月は翌7日のお昼過ぎ(10月7日12時48分ごろ)で、日付がちょうど1日ずれてしまいましたnao.ac.jp。このように、旧暦の十五夜と実際の満月が必ず重なるわけではなく、実際にはよくずれるものですnao.ac.jp。次に中秋の名月と満月が同じ日になるのは2030年とのことですnao.ac.jp。
また、日本独自の風習として旧暦9月13日の夜を「十三夜(じゅうさんや)」と呼び、この夜にも月見をする習慣があります。今年の十三夜は11月2日に当たりますnao.ac.jp。中秋と十三夜、合わせて「二夜(ふたよ)の月」ともいい、片方だけ見るのは「片見月」とされ縁起が悪いとも言われます。
七夕の星空の風情
仙台など東北では7月7日ではなく8月7日に七夕を祝いますが、もともと旧暦の7月7日(今の暦の8月頃)に行われていました。夏の夜空の風物詩である七夕では、織り姫と彦星の物語があります。織り姫星はこと座の一等星ベガ、彦星はわし座の一等星アルタイルにあたりますnao.ac.jp。夏の夜、これら二つの星は空の高いところで輝き、暗い場所で見上げればその間に天の川が横たわっているのがわかりますnao.ac.jp。いわゆる「夏の大三角形」は、ベガ・デネブ・アルタイルの3つの星で構成されます。七夕の夜にたまたま細い三日月(月齢5~6くらい)が出ていると、その三日月が天の川に架かる橋のように見えることがあります。昔話のイメージそのままに、夜空を見上げると星と月がつながるようで趣深いものです。
「風流」って何だろう?
さて、ここで改めて「風流(ふうりゅう)」という言葉を考えてみます。辞書によれば「風流」とは「上品な趣があること」「みやびやかな様子」を意味し、俗世を離れて詩歌や茶道、書画などの趣味に浸る優雅さを表す言葉ですdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp。つまり「風流」な時間とは、何か大げさな行動をすることではなく、自然や芸術の美しさを静かに味わうことにあるのかもしれません。あるブロガーも、七夕は天体現象が由来だけれど中秋の名月はただの「気分・風流」にすぎないと感じていて、団子を食べるよりも「風流とは行為ではなく感じるものではないか」と締めくくっていますsaitoutakayuki.com。
中秋の名月の夜、あなたはどんな風に過ごしましょうか? まわりに誰もいない静かな庭で月を眺めるもよし、音楽を聴きながら夜風に身を任せるもよし。大切なのは「その瞬間をいかに味わうか」、つまり心に浮かぶ美しさに身を浸すことなのかもしれません。
天体観測手帳2019の紹介
天文情報をもっと手軽に楽しみたい人には、技術評論社の『天体観測手帳2019』(早水勉著)がおすすめです。これは月ごとの星空イラストや、毎週・毎月の天文イベントが美しいカラー図版でまとめられた手帳形式の一冊で、2019年の天文データも盛り込まれていますgihyo.jp。分厚い「理科年表」ほど難解でなく、日々のスケジュールの中で星空観察を楽しむにはぴったりのガイドブックですsaitoutakayuki.comgihyo.jp。本記事の内容もこの『天体観測手帳』から多くを参考にしています。
中秋の名月も七夕も、夜空を眺めながら日本古来の言い伝えや自然の美しさに思いを馳せる良い機会です。星と月がつなぐ浪漫ある夜を、ぜひあなたなりの「風流」で味わってみてください。
参考資料: 国立天文台「中秋の名月(2025年10月)」nao.ac.jp、国立天文台FAQ「七夕について」nao.ac.jp、goo辞書「風流」detail.chiebukuro.yahoo.co.jp、技術評論社『天体観測手帳2019』gihyo.jpなど。
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