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【エドガー・アラン・ポー】「早まった埋葬」短編小説〜生きながら棺桶に入れられる恐怖

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創元推理文庫には安価な価格でポーの作品をコンプリートできるシリーズがあるのをご存知だろうか。「ポオ小説全集」4巻がそれである。さらに「ポオ・詩と詩論」なる別冊や、全集の2巻にはいち早くこのアメリカの天才を見出してフランスに紹介した、ボードレールのポーに関する論文まで読める。

今回は全集3巻収録の「早まった埋葬」のレビュー。

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◯「モルグ街の殺人」→エドガー・アラン・ポー【モルグ街の殺人】〜史上初の推理小説・レビューとあらすじ

あらすじ

ストーリーは別に複雑ではない。これはむしろポーの得意とする読み物系小説だ。まずは3件ほどの死んでないのに死んだと見做されて埋葬された実例があげられる。そして語り手である主人公の持病についてと、死んでないのに埋葬されることへの恐怖が綴られている。

その持病の中で意識不明の状態で見た恐ろしい幻想の紹介と、最後に実際に早まって埋葬されてしまうパニック状態が描かれる。だがそれは記憶の混乱がもたらす勘違いであった。つまり主人公はバージニア州に狩猟に出かけた時に気を失い、とある岸辺に停泊していた船に運び込まれる。そこの窮屈な寝台で目を覚ますのだが、その感覚が恐れていた早まった埋葬そっくりだった、というわけだ。

早まった埋葬

生きているうちに埋葬されてしまった例だが、日本のように遺体を火葬にする国ではあまり関係がない。キリスト教国家が棺桶に入れて土葬をするのは、最後の審判で復活する時に死者たちが墓穴から立ち上がって肉体を纏うと信じられているためであろう。

納骨堂の中で息を吹き返して入り口の扉に引っかかって、立ったまま腐ってしまった女性。死んだ失恋した相手の髪を切り取るため、恋人が墓穴を掘り起こすと蘇生した話。埋葬が終わってから作業員が墓石の上に腰掛けて休んでいると、下から土が盛り上がってきた話。

チフスで死んで解剖室で切開中に、電気ショックで蘇り意味不明の言葉を発した人間の話。その言葉とは後にわかったことだが「僕はまだ生きているんだ」だった。

墓穴の夢

ポーお得意の悪魔的呪詛のような印象に残る夢の話がある。主人公の持病とは急に死んだようになって昏睡してしまうというようなものであったが、その中でも彼は夢を見たりすることはできたのだった。特筆する話として、悪魔が出てくる夢があった。

悪魔は彼を墓場へ連れて行くと、今までに死んだ数多くの人間が墓穴で横たわっているのを見せられる。死人たちは横になっていても眠っていない。本当に眠っている死者はほんのわずかで、多くは悪夢にうなされて不快な寝返りを打ったり、小さな呻きを立てたりしていた。

ボードレールの「陽気な死者」"le mort joyeux"なる詩を思い出させる。もっとも影響を受けているのはボードレールの方である。この詩の中で詩人は、自分が死ねばこの世に何の悔恨も未練もなく喜んで蛆虫に身体を食わせてやると言って喜んでいるのだ。

無駄な用心

主人公は発作への恐れから自分が埋められる予定の墓穴に内側から開けられる仕掛けや、飲み物などを隠しておいた。棺桶にも同じく細工して万が一間違って埋められてもパニックにならないで済むように用心していた。だが前述した狩猟で気を失い、記憶が混乱して見知らぬ墓に埋められてしまったと勘違いする。

真っ暗闇で狭い船の中の寝台は墓穴そっくりだった。ついにどこにも救いが残されていないことがわかるや、彼は取り憑かれたような叫び声をあげた。「何を喚いていやがるんだい!」「おいおい、どうしたんだ!」仲間に叩き起こされ、気の迷いから生じた早まった埋葬への恐れは以後克服されたのだった。

まとめ

シンプルな短編ながらこの作品は終わり方が渋い。「沈黙」という作品にも通ずるポーの詩的・物語的スタイル。「ぺルシャの英雄アフラシアブが、オクラクサス河を流れ下る時に一緒だった悪鬼たちと同じように、それらの恐怖は眠らせておかねばならぬ。

我々がその餌食と成り果てぬように、何とかしてあの悪鬼どもを微睡ませておかねばならぬ。さもなければ我々の破滅なのだ

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