ダンテ『神曲』まとめ「天国篇」シリーズ2回目。天国界におけるベアトリーチェとの問答は主にキリスト教の教義に関するのが多いが、それらについては退屈だろうからあまり触れない。
登場する魂たちの姿、各天国の天界の描写もほぼ光のみである。光、光、光。これが「天国篇」が一番退屈な原因なのだが、面白そうな部分だけ端折ってご案内して行こう。
第4歌〜「ティマイオス」
第1の天界である月光天で導女ベアトリーチェとダンテの質疑応答がある。その一つとしてプラトンの「ティマイオス」で記されている説について説明がある。
「ティマイオス」は哲学者プラトンの最も不可思議な古代の書物で、宇宙について論じられている。前回出てきた4つの元素を含む、宇宙の始原(アルケー)が2種類の直角3角形と5つの正多面体として説かれる。
もうひとつ世界(コスモス)は魂と理性を持った生き物であり、造物主は生ける神々つまり星々にも魂を与え、死すべき人間を支配させた。
人は生まれるとき自分の星の影響の元に繋がれるが、良き生を送った魂は自らの星へと帰る。これに対し悪しき生を送った魂は冥府のハデスへと落ちるのでる。
◯「ティマイオス」についてはこちら→プラトン【ティマイオス】おぼえがき・レビュー〜重要箇所をわかりやすく紹介
第5歌〜水星天
月での対話が一通り終りベアトリーチェが顔をある方角へ向けると、彼女の姿が変化した。それとともにダンテも同じように変わった。すでに二人は第2の水星天にいた。
水星は太陽系惑星の一つで公転の軌道自体は天文学的には太陽に最も近いそうである。しかし「神曲」ではダンテらは水星の次は金星へ行く。
水星はラテン語でMercuriusという。メルクリウスは錬金術の神であるギリシャ神話上のヘルメスと同一、さらにエジプトの鶴の頭をした書記トート神と合成されヘルメス・トート、ヘルメス・トリスメギストスとなるなど有名。
湖や池に鯉の餌を投げると魚たちは一斉に餌に向かって集合する。そのように光の群がダンテの元に一同に集まってきた。
第6歌〜皇帝ユスティニアヌス
水星に住まう魂の一人が光の中から話し始めた。彼は6世紀の東ローマ帝国皇帝・ユスティニアヌスであった。
ユスティニアヌスはローマの法案を改訂して偉大な「ローマ法大全」なるものを作り上げた。また初期キリスト教時代のビザンティン文化の発展に多大な寄与をし、皇帝の統治は学問・芸術・建築ともに貢献した。
イスタンブールにある有名なハギア・ソフィア大聖堂なども彼の事業であることからして、そのすごさがお分かりなることだろう。この建築はビザンティン文化最高傑作とされる。
ハギア・ソフィア大聖堂(拡大推奨)
まとめ
崇高な魂らが住まう天国界。この先どのような人々がダンテを待っているのだろうか。二人の飛翔はより高みへと向かって駆け上がるのだった。
読者である私たちも目が眩まないように頑張って付いていこうではないか 😉