第7歌〜休息
ヴェルギリウスと同郷の吟遊詩人ソルデルロの話により、煉獄では日が暮れると活動不能となる由が語られる。夜の闇とともに、人々の力は失せるのだ。
過酷な山登りに与えられた安息の時である。それはあたかも浄罪に苦しむ魂に与えられた天の慰めであろうか。
ソルデルロはとある岩場の窪みへとダンテたちを連れて行く。そこにはすでに聖母マリアへの祈りを歌いつつ、束の間安らいでいる魂たちがいた。
第8歌〜蛇
夜休んでいる御霊たちとダンテの元へ、天使が二人舞い降りてきた。手にはそれぞれ切っ先の欠けた剣を持っている。
エデンの園を守護するケルビムの剣は恐ろしいが、この剣は魂たちが安心して休息できるようにとの計らいなのだった。
というのは夜の闇に乗じて、1匹の蛇が飛んできたからだ。楽園にいたイブを騙して知識の実を食べさせたあの蛇である。
蛇はあっけなく天使によって撃退されたのだった。
第9歌〜門
ダンテが眠りに落ちるとルチーアという天の女人が降臨し、煉獄の門口へと運ぶ。眠りの中で詩人はガニュメデスを攫って神々の酒注ぎとした鷲のような鳥に、掴まれて天高く持ち上げられる夢を見ていた。
目覚めるとルチーアが事の成り行きを説明する。彼女は聖母マリアのそばにいる、ベアトリーチェの知り合いである。ダンテが地獄の門でヴェルギリウスという案内者を得る事ができたのは、彼女の計らいでもある。
煉獄の入り口には3段の象徴的な石段があり、天使が番をしている。
石段は1段目が鏡のように己を写す澄み切った大理石だった。2段目は亀裂が入った目の粗い焼き石だった。そして3段目は血のように赤い班岩だったという。
ダンテが先へ進ませてもらえるように祈ると、天使は詩人の額に七つの大罪を表す"P"を7箇所刻みつけた。「罪」はイタリア語原文では"Peccato"と書くのである。
ここから罪が浄められるたびに、"P"の文字は消えるのである。天使は金銀二つの鍵を回し、ダンテに煉獄の門を開けた。
まとめ
煉獄では夜は休めという掟があるという事がわかった。なんという有難い配慮だろう。でなければ決してエベレストのような山を登ることはできないだろう。
また夜の眠りを天使が守護してくれるという事も。これで安心して過去の罪を悔いる事ができるというものだ。
ここにしてついに煉獄の門内に入った。ダンテは尊敬する師匠であるヴェルギリウスと煉獄を登りながら、一つずつ罪を洗い流して行くのだ。
3段の石段は煉獄での意識の変化を表し、終わり近くでは執念を以って登るであろうことを教えているのかもしれない。なぜなら煉獄の苦しみの絶頂で、ベアトリーチェの愛くるしい微笑を目前に控えるからである。