【グレイブ・エンカウンターズ】恐怖と笑いの共演──隠れた名作ホラー映画

視聴覚の墓場

【グレイブ・エンカウンターズ】恐怖と笑いの共演──隠れた名作ホラー映画

映画の第一印象──REC×ブレア・ウィッチ的な怪作

『グレイブ・エンカウンターズ』は、一見すると『ソウ』や『CUBE』系統のソリッド・シチュエーション・スリラーに分類される作品だ。しかし、観てみると印象はまったく異なる。むしろ『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と『REC』を掛け合わせたような、フェイク・ドキュメンタリー型ホラーに近い。

シリーズ化されてダラダラと続く作品も多い中、本作は鮮烈にして単発。『パラノーマル・アクティビティ』のように長期展開を狙うでもなく、一発で観客を仕留めてくる潔さがある。監督は「ザ・ヴィシャス・ブラザーズ」なるコンビ。商業主義ではなく、純粋に撮りたいものを撮った──そんな気概を感じる。なお続編もあるようだが、監督が別人だったため、あえて手を出していない。

「パラノーマル」系と思わせて、じわじわ狂気が侵食

物語は、超常現象を追うTV番組の“録画素材”として編集された映像という体裁で進行する。そのリアリティの質感は『パラノーマル・アクティビティ』に通じるが、やがてそのリアリズムは崩壊し、狂気とユーモアが入り混じる異様な空間へと突入していく。

最初は「ジワジワ来る」系の恐怖がじりじりと忍び寄り、やがて“笑っていいのか怖がるべきか”分からない場面が続出。ホラー好きなら、背筋を凍らせながらニヤついてしまうだろう。

笑えるほど怖い、怖いのに笑える

本作の魅力は、恐怖とコメディの絶妙なバランスにある。突如起こるショッキングな展開、常識を越えた怪奇現象の連続──それらが突き抜けすぎて、つい笑ってしまうのだ。これはサム・ライミの『死霊のはらわた』にも通じるセンス。恐怖のピークを突き抜けた先に、ブラックユーモアという快楽が待っている。

タイトルの『グレイブ・エンカウンターズ』という語感にも、B級映画らしからぬセンスが光る。恐ろしく、しかしどこか笑える──それがこの作品の最大の武器だ。

狂気の勝利と悪霊の親玉

一人で暗い部屋で観ると、たぶんかなり笑ってしまう。恐怖が極限に達したとき、人間の脳は「笑う」という処理を選ぶ──そんな現象を地で行く映画だ。登場人物たちも、恐怖のあまり次第に気が触れていく。観ている側も、痛いのに笑ってしまうような、あの感覚に陥る。

クライマックスでは、かつてロボトミー手術を行っていた精神病院の院長という“ラスボス”が登場。廃墟の中でうごめく恐怖と笑いは、まさにマンディアルグが描いた「狂気の勝利」のようでもある。

そして印象的なカットのひとつ──床に転がる一冊の本のタイトルが画面に映る。

“MEDICAL TREATMENT OF MENTAL DISEASES” (精神疾患の医学的治療)

──この映画そのものが、現代人の心に効く“治療薬”なのかもしれない。

総評──これは観るべき

登場人物たちの罵り合い、悪態、混乱ぶりも含め、すべてがエンタメとして高純度に仕上がっている。観る者を震わせ、笑わせ、最後に「なんだこれは」と呆れさせる。でも、それこそが“映画の魔力”だ。

『グレイブ・エンカウンターズ』は、恐怖と笑いの共存という難題に果敢に挑んだ、隠れた傑作である。 🌟個人的評価:星5つ。

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