【七将の攻囲】オイディプス王神話が生んだギリシャ悲劇〜テーバイ攻めを描く
『テーバイ攻めの七将』は、古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人、アイスキュロスによって書かれた傑作。舞台はテーバイの城門、兄弟の争いを描いた血と運命の物語です。
オイディプス王の呪いがすべての始まり
この悲劇の発端は、テーバイの王オイディプスにかけられた神の呪いにあります。
オイディプスは、生まれる前から「父を殺し、母と交わるだろう」と神託を受けていた運命の子でした。父ラーイオスは神託を恐れて子を捨てさせますが、命を救われた赤子はコリントス王家で育てられ、やがて真実を知らぬまま父を殺し、母と結婚してしまいます。
その後、テーバイに襲いかかるスフィンクスの謎を解き、王となるオイディプス。しかし罪が明るみに出ると、自ら両目を潰し、国を追放されました。その際、彼は自分を助けようとしなかった息子たちに呪いを残します――「お前たちはいつか王座を巡って殺し合うことになるだろう」と。
スフィンクスの謎かけ
この物語の中でも特に有名なのがスフィンクスの出す謎です。
「朝は四本足、昼は二本足、夕暮れには三本足で歩く生き物とは?」
オイディプスが「それは人間だ」と答えると、スフィンクスは敗北を認めて自死します。この知恵と勇気によって彼はテーバイの英雄となったのです。
『テーバイ攻めの七将』のあらすじ
物語は、呪われた息子たちの戦争に焦点を当てます。
兄のエテオクレスがテーバイの防衛を担い、弟ポリュネイケスはアルゴス軍を率いて攻め入る。城には七つの門があり、それぞれに敵将が配置されます:
- テュデウス
- 雷をあざけり死んだカパネウス
- エテオクロス
- ヒッポメドン
- パルテノパイオス
- 預言者アムピアラオス
- そしてポリュネイケス
エテオクレスはこれに対し、味方の将を一人ずつ配置して応戦。そして最後の第七の門には、自らが立ち、弟と対峙する道を選びます。
戦の結末と呪いの成就
テーバイ軍は城を守り抜き勝利をおさめますが、エテオクレスとポリュネイケスの兄弟は相打ちに倒れます。まさにオイディプス王の呪いが現実となる瞬間。
狂気すれすれの乙女たちによる合唱が恐怖と悲嘆を歌い、英雄たちの運命が詠い上げられます。
感想と見どころ
この作品、実にシンプルながら熱く濃密な一幕劇。原文でも非常に短く、30分ほどで読み切れる長さです。
個人的に最も面白いのは、七つの門に対応する敵将と味方将の名乗り合い――戦国時代の布陣図のような緊張感。エテオクレスの勇猛果敢なセリフ、テーバイの乙女たちの不安と祈りが交錯し、リズミカルに物語が展開します。
日本の能に似た構成と抑揚があり、台詞の響きも含めて読むのが気持ちいい作品です。
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