第22歌〜双子座
土星天の審判を待ち望むかのような魂たちの叫びを聞き、圧倒されたダンテは導女ベアトリーチェから励まされる。次いで聖ベネディクトゥスが僧院の腐敗堕落を嘆く。かれが話し終えると光の群はつむじ風のように上って行った。
ベアトリーチェに促されてダンテは土星の梯子を登り、天国界第8番目の恒星天へ入った。ダンテは振り返ってここまでの7つの天体とはるか彼方に小さく見える地球を一望する。そして数かぎりない星座群が恒星天でひしめいている。
その中の一つに双子宮すなわち双子座があり、この星の元にダンテは生まれ詩の才能を与えられたのだった。いまダンテはここに帰って来た。双子宮は黄道12宮と呼ばれるものの3番目で、人が何座生まれだと言うのはこれによる。占星術などでよく出てくるが本来は天文学用語なのかもしれない。占星術が単なる迷信だとしても、星座は天空の一角に現存する物体なのだから。
第23歌〜ガブリエル
ベアトリーチェは何かを期待する者のようにある方角をじっと見つめていた。すると天頂のあたりからキリストが凱旋の車に乗って現れた。キリストが昇天すると続いて聖母マリアが光り輝いて現れる。
大天使ガブリエルがマリアに冠を授けると、聖母は息子のあとを追って至高天へ上った。ガブリエルは3大天使の一人で旧約の「ダニエル書」に記載が見られる。預言者ダニエルに難解な幻の意義を悟らせ、知恵を与えるのである。
また新約「ルカによる福音書」では、マリアが男の精液ではなく聖霊によってキリストを妊娠した時、ガブリエルが彼女に告げに舞い降りる。受胎告知はルネサンスの絵画でもよく描かれた。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」
第24歌〜聖ペテロ
恒星天にいる聖ピエトロがダンテに信仰についての質問をする。ピエトロはペテロのイタリア名。同様に英語だとピーター、仏語だとピエールなど男性名にもなっている。聖ペテロはキリスト十二使徒の一人で新約聖書に出てくる。
質問に全て的確に答えることができると、ダンテは恒星の魂たちに取り囲まれた。かれらはダンテの周りを3たび回転しながら盛大に祝福した。問答においては三位一体を確信を持って信じることをダンテが見事に述べた。三位一体は父と子と聖霊をさすのであるが、3つであって一つのもの、切り離せないものに喩えられる。
例えば家系ラーメンでニンニク・ライス・海苔で三位一体などとふざけて言ったりもする。この『神曲』には全編に渡って「3」という数に対するこだわりが刻み込まれていることは、シリーズ一番最初の記事に書いた。3は聖なる数なのである。
◯『神曲』まとめ1回目はこちら→ダンテ【神曲】まとめ(1)〜「神曲」全体及び「地獄篇」の序
まとめ
このシリーズはあと3回で終了する。今ダンテとベアトリーチェがいる恒星天のさらに上には、宇宙を回転させる原動天と父なる神がいる至高天があるだけである。このクソ長い詩がいったいどのような終わり方をするのか、こうご期待 😎