小説

魔が棲む谷で少年が見たもの——泉鏡花『龍潭譚』感想

泉鏡花『龍潭譚(りゅうたんだん)』感想:魔が棲む谷、子供のまぼろし明治29年発表の短編『龍潭譚』は、泉鏡花の幻想文学の中でも、比較的ストーリーがはっきりしていて読みやすい一編。澁澤龍彦が「初めて読んだ鏡花作品」として挙げたことでも知られてい...
評論

三島由紀夫の死と『葉隠』——「武士道といふは死ぬことと見つけたり」の真意

三島由紀夫が「座右の書」と語った『葉隠』。その思想は、現代人にとってどこか遠く、過激で、そして不思議と魅力的です。本記事では、三島由紀夫の著作『葉隠入門』を通して、この「禁断の書」の本質を探ってみます。三島由紀夫と『葉隠入門』──「武士道と...
小説

34年ぶりに読んだ『ベッドタイムアイズ』と、あの子の記憶

山田詠美なぜこの小説家の名前を知っているのか。今から34年ほど前、当時の女友達にこの本を貸し、その感想を聞いた記憶があるからだ。再読はそれ以来、34年ぶりということになる。感想も当時とはまったく違うだろう。いや、むしろ今回は何も感じなかった...
小説

50代で再読した『限りなく透明に近いブルー』──村上龍の初期傑作は今でも通用するのか

50代で再読した『限りなく透明に近いブルー』──村上龍の初期傑作は今でも通用するのか村上龍のデビュー作『限りなく透明に近いブルー』を、数十年ぶりに再読しました。19歳のときに初めて読んで衝撃を受けたこの小説。50代になった今、当時とは違った...
哲学

【抱朴子】道教〜宗教化され伝説化された仙人そして仙薬とは

概要例のごとく『抱朴子』についての詳細はwikipediaに丸投げする。今回は岩波文庫と明徳出版社の中国古典新書に出ている本のレビューとなる。”道教”のwikiには典籍欄にこの書が大々的に載る。ということは、道教に興味を持った限りは目を通さ...
日常

【メルカリ】体験談〜「メルカリ教室」を受けたあと半月の間に起こったこと

メルカリ誰もが知るこの事業者名、CMのせいもあろうか一挙にポピュラーになった気がする。私が教室をネットで受けたのは令和3年7月11日日曜日、zoomをダウンロードして入室したそこは、いかにもくだけた感じの雰囲気である。こちら側のマイクをミュ...
哲学

【荘子】岩波文庫版(4冊組)を読んで〜感想紹介〜Tao[道]とは何か

概要菅原道真は讒言によって太宰府に左官され、そこで苦労をし、幼い子供を葬り、ついに終焉を迎えた。以後朝廷では怪異が続き、様々な道真の供養を行うも無駄で、醍醐天皇は皇居の落雷事件によって崩御する。天神と呼ばれ学問の神様と崇められている我が国の...

【碧巌録】感想・紹介〜紆余曲折の中国文芸作品を読んで

岩波文庫の3冊組み『碧眼録』を約半年かかって読み終えたのでその感想を書きたい。概要書物の詳しい概略はwikipediaに譲る。よってここには一般論ならぬ筆者の極めて個人的感想を記すことになる。まずこの書物の名前を知ることになったのは故夏目漱...
哲学

【秘密曼荼羅十住心論】弘法大師〜感想紹介〜(第七回)

外道外道は仏教でいうところの意味は仏法以外の教え全般を指す。道を外れると書き、つまり正しいTao(タオ)とは荘子老子の哲学における無為なのである。少なくとも梵語を翻訳した三蔵らはその字を使用した。法華経如来神力品にいかなる所苦楽いかなる時に...
哲学

【秘密曼荼羅十住心論】弘法大師〜感想紹介〜(第六回)

羊第一から第十まで、順に住心の詳細が弘法大師によって解説される。主体となるのが空海が請来した密教経典であるが、正式な顕教の内典や仏教以外の古代中国の外典もある。これらの引用に学者がするような解釈が付され、各章冒頭のみは空海が得意とする詩文的...