上は「東方3博士の礼拝」(1504年)。キリストの誕生を占星術で知った賢者たちが、馬小屋で生まれた神の子を拝みに遠方から訪れる。
メランコリア
デューラーは1471年現ドイツ国家ニュールンベルクに生まれた。
この画家を知ったのは澁澤龍彦の本でメランコリアを見てからだったと思う。
その幻想的な作風が好きになり図書館で画集を漁るなどしながら、私はデューラーの絵がとても好きになっていた。
この絵では憂鬱に頬杖をついて物思いにふける天使が、一見乱雑に散らばった部屋で座っている。ゴチャゴチャしているようでそこに置かれているオブジェは奇妙なものばかりである。釘、ノコギリ、円球、不整形な多角面体、丸くなった4足獣など。まるでこんがらがった思考から何かを生み出そうとしている哲学者のようである。
自画像とサイン
デューラーの絵にはAとDを組み合わせたような独自のサインがあって、これぞ己の芸術を極めスタイルを確立したアーティストといった感じだ。また若い頃から自分は周りと違うぜ、という風なやや高飛車な自画像を書いていて、その点も気に入っていた。
こちらのかなり若い自画像ではおしゃれな帽子を被り服もかなりかっこいい。右手に雑草のような草を持っているところがまた素敵である。すでに大画家としての風情をたたえている。
黙示録の4人の騎士
ヨハネの黙示録に出てくる4人の騎士の絵などは、版画であるが技を極めたデューラーの凄腕の作品であろう。
恐るべきヨハネの黙示録は新訳聖書の最後に読むことができる。世界の終わりの予言書としての扱いを昔から受けているが、いかんせん、一向に人類は滅びそうにない。
黙示録では世の終わりに4人の騎士がやって来たと書かれている。特に4番目の騎士は青白い馬に乗っていて死と呼ばれた。なんだろう、この絵の得体の知れない気迫は。ものすごい勢いで地を破壊して回る水素爆弾の爆風のようである。
犀の絵
また当時動物園などもない時代に他人の噂話と想像力だけで書いたサイの絵なんかも、非常に興味深い。
どうだろう、まるでドラクエの敵キャラクターだ。背中にはありもしない角が生えている。
キリストぽい自画像
壮年に達してからだと自らをキリストに似せて自画像を書くなどしている。よほどキリストに憧れていたのであろう。
騎士と死と悪魔
このように多彩な作品を描いているデューラーだが主なところ版画が特に素晴らしい画家といった特色があると私は思っていたようである。
生きていた時代がまだまだ中世の迷信の時代であり、ドレのわかりやすくて甘いタッチの版画などとは性質が異なっている。
ADという独自のサインであるが、アーティストがここまで自分の創造物を愛して誇りを持てたならどんなに素晴らしいことであろう。