【ファインマン物理学】岩波書店レビュー〜物理音痴の人でもきっと楽しめる教科書

評論

全5巻を読むまでの道

物理学者リチャード・ファインマンの名前を、私が初めて知ったのはアランナ・ミッチェルの『地磁気の逆転』(邦訳)を読んだときだった。高校の数学すらまともに習得していない私にとって、物理学の世界は本来縁遠いもの。しかしファインマンの語る言葉には、そんな私にも届く強い魅力があった。

ファインマンの講義録である『ファインマン物理学』は、カリフォルニア工科大学で1960年代に行われた授業が元になっている。原著は3巻だが、日本語版では5巻に分かれて出版されている。

  • 第1巻『力学』
  • 第2巻『光・熱・波動』
  • 第3巻『電磁気学』
  • 第4巻『電磁波と物性』
  • 第5巻『量子力学』

このうち私は第5巻を除く4冊を、すべて古書で手に入れて読んだ。

物理音痴の私が選ぶランキング

私は高校時代から物理が苦手で、公式をひとつも覚えていない。微分積分もまったく理解できない。それでも、ファインマンの本には夢中になった。以下は私なりのおすすめ順である:

  1. 『力学』:一番面白い。ニュートンからアインシュタインまで、物理の核心に不思議な角度から迫ってくる。
  2. 『光・熱・波動』:デカルトの『気象論』と『幾何学』を現代化したような、驚きの知識が詰まっている。
  3. 『電磁気学』:稲妻や地磁気など自然現象の説明が興味深く、4分の1は楽しめた。
  4. 『電磁波と物性』:公式だらけだが、結晶の話や収録論文だけは興奮した。

各巻の魅力をざっくり紹介

第1巻『力学』
およそ半分以上が素人でも楽しめる内容で構成されており、特に運動の法則を直観的に説明するスタイルが秀逸。ファインマンの天才ぶりがもっとも現れている。

第2巻『光・熱・波動』
「波とは何か」「光とは何か」を原理から考えさせる。3分の1以上の内容が、自然哲学的に面白い。

第3巻『電磁気学』
冒頭からつまずきがちだが、雷や磁場、そして地球の磁気に関する考察は読み応えがある。地磁気から世界の終末を妄想した私には、特別な巻となった。
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第4巻『電磁波と物性』
ひたすら数式が並び、私には難解だったが、結晶構造の章と掲載論文だけは興奮した。

第5巻『量子力学』
未読だが、スマホやGPS、人工衛星など現代の基幹技術の理論基盤である。だからこそ、恐ろしく難しい気がして手が出ない。

まとめと私の見解

ファインマンの講義は、まるで俳優のようにスマートな彼の姿そのままに、洗練され、ユーモアがあり、そして挑発的だ。演習問題込みで体系的に構成されているが、物理音痴の私にとっては、紙の束と化すページも少なくない。

それでも、「わからなくても読める」「わからないから面白い」と感じさせてくれるところに、このシリーズの凄みがある。あなたがもし物理に自信がないなら、なおのことおすすめしたい。

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