小説の闘牛場

小説の闘牛場

黄金虫(エドガー・アラン・ポー)レビュー|暗号と宝探し、知性の勝利を描いた名作

創元推理文庫第4巻に収録された、エドガー・アラン・ポーの短編小説『黄金虫』をご紹介します。あらすじ物語は、かつて裕福な家に生まれながら没落した若者ウィリアム・レグランドが、海賊の隠した宝の地図を偶然発見し、その謎を解き明かしていく冒険譚です...
小説の闘牛場

『すべては消えゆく』レビュー|マンディアルグが遺した“終末の黙示録”を読み解く

すべては消えゆく――マンディアルグが描いた“終末の幻視”マンディアルグ(1909–1991)の最後の長編小説『すべては消えゆく』は、亡くなる4年前に発表された作品である。原題は “Tout Disparaitra”――つまり「すべては消える...
小説の闘牛場

『オトラントの城』レビュー|巨大な兜と怪奇の城―ゴシック小説の原点を読む

📚 幻想と怪異が交差する、ゴシック小説の原点"空から落ちた巨大な兜が、運命を告げる。"作品概要イギリスの貴族ホレス・ウォルポールによる『オトラントの城』(1764年)は、幽霊や超常現象が城内に現れるという、ホラー色の強い物語だ。ウィリアム・...
小説の闘牛場

三島由紀夫『英霊の聲』レビュー――憑依と「見る」こと、日本の霊的美学

1966年に発表された三島由紀夫の短編小説『英霊の聲』。本作は、ある霊媒師の元に集まった人々が、かつて命を散らした青年将校や特攻隊員の“声”を聴くという異様な設定の物語です。呼び出された霊たち降霊によって語り出すのは、2.26事件で処刑され...
小説の闘牛場

【三島由紀夫『憂国』レビュー】愛と死、切腹と美の極限文学

概要 三島由紀夫の短編小説『憂国』。タイトルからしていかにも「右寄り」な空気を漂わせ、映画化もされている。作者自身が主演し、割腹自殺した彼の人生そのものが作品と重なって見える。映画のスチルを見るだけでも、まさに市ヶ谷で事件を起こしそうな雰囲...
小説の闘牛場

三島由紀夫『金閣寺』レビュー|美と破壊の衝動を描く文学の到達点

三島由紀夫『金閣寺』レビュー|美に呪われた男と“究極の破壊” 三島由紀夫の代表作とも称される『金閣寺』。あまりに評価が高いために、今さら読むのも気が引けていたのだが、中年にして初めて手に取った。そして思った。「これはただものじゃない」と。 ...
小説の闘牛場

『午後の曳航』レビュー――三島由紀夫が描く少年たちの“栄光”と供犠

午後の曳航 ― 少年たちのサディズムと“栄光”の行方タイトルの『午後の曳航(ごごのえいこう)』に含まれる「曳航」という言葉は、辞書を引かないと意味がつかみにくいかもしれない。だが「栄光」と同じ読みを持つことに気づくと、この作品に込められたダ...
小説の闘牛場

【レビュー】閉ざされた城の中で語るイギリス人――マンディアルグと欲望の要塞

閉ざされた城の中で語るイギリス人:マンディアルグの欲望と孤絶の城本作は、マルキ・ド・サドの「悪の教典」を彷彿とさせる過激な内容でありながら、作者マンディアルグ自身によれば「シュルレアリスムを代表する作品」とされる、きわめて特異な文学作品であ...
小説の闘牛場

アーサー・ゴードン・ピムの物語(後編)──死体、幻覚、そして白き神の出現

*前回【エドガー・アラン・ポー】「アーサー・ゴードン・ピムの物語」徹底解説|漂流・反乱・人肉・幻の南極までの続き;幽霊船さて死体変装の効果は抜群であった。腰を抜かす者、そのままショックで死ぬ者。わずかばかりの抵抗にあったが彼らは一命を除き全...
小説の闘牛場

狂気と心臓の鼓動|ポー「告げ口心臓」レビューと考察【The Tell-Tale Heart】

告白という形『告げ口心臓(The Tell-Tale Heart)』は、エドガー・アラン・ポーが得意とした狂気の短編スリラー。その凄みは、映像も音響も一切使わず、「文字による独白」だけで読者を恐怖の渦に引きずり込む点にある。「神経がね、恐ろ...