小説の闘牛場

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【泉鏡花『高野聖・外科室』ほかレビュー】難解だけど魅力的な短編集を読む

難しい文章泉鏡花──その名を聞いたことはあっても、実際に読んだ人はどれくらいいるだろう。そんな疑問を抱かざるを得ない。筆者も中年になってから、ようやく「高野聖」を手に取った。その評判通り、文章の難しさにまず打ちのめされた。鏡花は明治生まれ、...
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【泉鏡花『琵琶伝』感想】悲恋と血の結末──月夜に響く鸚鵡の声

遺言泉鏡花の短編小説『琵琶伝』は、明治29年1月、『国民之友』誌に発表された。当時は、親が決めた相手と強制的に結婚させる風習がまだ色濃く残っていた時代。お通という若い娘は、従兄弟の謙三郎と互いに想い合いながらも、親族間で取り決められた陸軍尉...
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【マンディアルグ『大理石』註解】血と狂気を越えて──透明な世界への旅

フランス語原文と澁澤龍彦訳を参照しながら、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの『大理石』を可能な限り註解する。Grand Spectacle(大いなる光景)マンディアルグは、極めて慎み深い師である。彼が小説という形で遺した『大理石』は、...
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【マンディアルグ『燠火』】夢の螺旋と崩壊した現実|夜の馬車と舞踏会の果て

【マンディアルグ】名作短編「燠火」紹介・レビュー〜夢の中の夢を見ている気分「暖炉」という暖房法が、現代の生活から遠ざかって久しい。そのせいか、「燠火(おきび)」というタイトルには、どこか懐かしく、ノスタルジックな響きが漂う。今回は、アンドレ...
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【マンディアルグ短編】「ポムレー路地」レビュー|怪物と幻想が蠢く異形の回廊

【マンディアルグ】「ポムレー路地」(Le passage Pommeraye)解説・感想・紹介まず実際の“ポムレー路地”の写真を見ていただこう。ネット上から拾ってきた画像だが、雰囲気はよく伝わるはずだ。日本人にとってはあまり馴染みのない“路...
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【処女とダイヤモンドの秘儀】神の子を宿す宝石鑑定と幻視の物語

【マンディアルグ】「ダイヤモンド」レビュー〜『燠火』収録の傑作短編小説【あらすじ】処女とダイヤモンドの秘儀物語の舞台は、リヨン通りの丘の上に建つ由緒ある宝石店。何世紀にもわたり営業を続けてきたこの店に、新たなダイヤモンドが届く。店主モーゼ氏...
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【マンディアルグ】短編「子羊の血」後編|黙示録の夜に少女が見た幻と殺意

【マンディアルグ】「子羊の血」〜短編集”黒い美術館”より紹介(2)フランスの作家アンドレ・ピエール・ド・マンディルグ氏の短編集『黒い美術館』より「子羊の血」を紹介。*前回からの続き→【マンディアルグ】「子羊の血」〜短編集”黒い美術館”より紹...
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【マンディアルグ】短編「子羊の血」解説|少女と愛兎に訪れる静かな地獄

【マンディアルグ】「子羊の血」〜短編集”黒い美術館”より紹介(1)フランスの作家アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグによる短編集『黒い美術館』から、「子羊の血」を紹介します。◆ 前置き“子羊”と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは新約聖書に登場...
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『黒い美術館』モンソー公園の奇譚|変身する男と“猫のマモン”との奇妙な婚儀

【マンディアルグ】L'homme du Parc Monceau.「モンソー公園の男」解説・紹介・感想前回の「ポムレー路地」に引き続いて『黒い美術館』からの短編の紹介。「ポムレー路地」が実際にフランスのナント市にあるのに対し、このモンソー公...
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黒猫|エドガー・アラン・ポーが描く恐怖と罪の物語

あらすじ主人公はもともと温厚で、動物を深く愛する人物だった。幼少期から多くのペットに囲まれて育ち、彼の愛情は動物たちに惜しみなく注がれていた。やがて彼は同じく動物好きの女性と結婚し、夫婦で一匹の美しい黒猫を飼い始める。この猫は聡明で神秘的な...