小説の闘牛場

小説の闘牛場

『海の百合』マンディアルグ|処女喪失と神話的恋愛の美学

マンディアルグ【海の百合】品田一良訳〜内容と感想 この長編作品が生まれるまでには、作者の”海の百合”と呼ばれる花との現実の出会いがあった。その出来事は同名の小評論「海の百合」に書かれている。この花は学名”パンクラス”と呼ばれる;力強く、香り...
小説の闘牛場

【悪徳の栄え】澁澤龍彦訳で読むサドの幻想と残酷美|河出文庫版レビュー

【マルキ・ド・サド】『悪徳の栄え』澁澤龍彦訳・河出文庫版レビュー河出書房新社より刊行されている澁澤龍彦訳『悪徳の栄え』(上・下巻)は、全訳ではないもののサド作品の精髄を凝縮した濃厚な抄訳である。その分量は全体の3分の1程度とされるが、読者を...
小説の闘牛場

【マンディアルグ】短編「ネズミッ子」感想・考察|幾何学的な死と生の寓話

【マンディアルグ】短編集『みだらな扉』より「ネズミッ子」レビュー品田一良訳『みだらな扉』は、原題を直訳すれば「放埓な扉」。いかにもマンディアルグらしい官能と不穏を感じさせるタイトルだ。本稿ではその中でも特異な一篇「ネズミッ子」を取り上げる。...
小説の闘牛場

【マンディアルグ「大理石」考察】夢と象徴の錬金術的解釈(後編)

第7の夢第7の夢では、かつての恋人カリタがラブホテルのような空間に登場する。恋人のように寄り添い鏡の前に立った二人の姿は、まるで絵葉書のように微笑ましい。しかし、鏡の縁には爬虫類の彫刻が不気味に配され、彼らを監視していた。これらの爬虫類はエ...
小説の闘牛場

【マンディアルグ『大理石』解説】夢・象徴・錬金術を読み解く註釈(前編)

マンディアルグの奇妙な長編小説『大理石』の第4部 ”証人のささやかな錬金夢” ( Petite oniroscopie du témoin) の註釈;しかし作者本人が述べているように主人公のフェレオル・ビュック自身の註釈は失われてしまってい...
小説の闘牛場

マンディアルグ『大理石』第5部「死の劇場」考察|死と象徴の迷宮を読む

【マンディアルグ】「大理石」V. 死の劇場 解説 アルゴリズムの楽模と国家マンディアルグの長編小説「大理石」の第5部「死の劇場」は特に難解な内容である。作者の意図は隠され、読み手はその計算に絶えず忍耐を要される。ここでは、自由な解釈を通して...
小説の闘牛場

【マンディアルグ】『大理石』第2部「ヴォキャブラリー」解説と考察

【マンディアルグ】『大理石』第2部「ヴォキャブラリー」考察|語彙崩壊と象徴の迷宮アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの長編小説『大理石』。その中でも第2部「ヴォキャブラリー」は、言葉の崩壊と記号の迷宮を舞台にした比類なき寓話である。本稿で...
小説の闘牛場

三島由紀夫『金閣寺』レビュー|狂気と美が燃え上がる“赤い傑作”

【三島由紀夫】『金閣寺』レビュー|完全な変質者による、完全な変質者の書再読して確信したこと三島由紀夫の『金閣寺』を、めぐりめぐって再読した。私にとっては三島作品の“入り口”だったが、初読のときは何がなんだか分からず、ただ文章に圧倒されたまま...
小説の闘牛場

谷崎潤一郎『卍(まんじ)』あらすじと感想|女性の愛と情念の迷宮

谷崎潤一郎『卍(まんじ)』あらすじ・感想|女の愛が絡み合う、黒く艶めく情念の渦谷崎潤一郎が40代に手がけた小説『卍(まんじ)』は、関西弁による女性の独白体で語られる異色作。句読点を極力省き、ひらがなを多用する独特の文体は、読者をじわじわと物...
小説の闘牛場

谷崎潤一郎『細雪』感想レビュー|姉妹の情と婚活を描く昭和の名作

【谷崎潤一郎】『細雪(ささめゆき)』〜遅すぎる婚活・昭和初期バージョン本作『細雪』は、谷崎潤一郎が第2次世界大戦中に戦火を逃れつつ執筆した長編小説。中央公論での連載はわずか2回で軍部の検閲により中止されましたが、谷崎は筆を止めることなく書き...