【スターリングラード】映画レビュー|ジュード・ロウ×レイチェル・ワイズの切なくも美しい戦争ドラマ
あらすじと第一印象
2001年に公開された映画『スターリングラード』(原題:Enemy at the Gates)は、ロシア・スターリングラード攻防戦を舞台に描かれた戦争映画の傑作。久々に再鑑賞したが、改めてその完成度に感動した。息を呑む戦闘描写、張り詰めた心理戦、そして人間味溢れるラブストーリーまで。3時間弱の上映時間を一気に観終えるほど、目が離せなかった。
最近の映画にありがちなCG頼みの展開や薄味な人物描写とは違い、本作は生身のドラマで観る者を引き込む。公開から20年以上経った今でも、その臨場感とリアリティはまったく色褪せていない。
実話ベースのストーリー
物語の主軸は、実在したソ連の伝説的スナイパー、ヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)と、彼を英雄に仕立て上げたプロパガンダ担当官ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)の友情と葛藤。そして戦火の中で芽生えたターニャ(レイチェル・ワイズ)との恋愛。
ナチス・ドイツ軍とソ連軍が激突するスターリングラードの地獄絵図の中、狙撃の技術だけでなく、思想、信頼、愛情といった人間の本質が試されていく。リアルな戦争描写に、人間ドラマがしっかりと織り込まれているのが本作の最大の魅力だ。
キャスト陣の熱演
ジュード・ロウは若きスナイパー役に抜擢され、冷静さと情熱をあわせ持つヴァシリ像を見事に演じ切っている。ハンサムなルックスだけでなく、役者としての存在感も際立つ。
レイチェル・ワイズ演じるターニャは、強さと可憐さを併せ持つ戦場のヒロイン。彼女の持つエロティックな色香と包容力が、極限状態にある兵士たちにとって一筋の救いとなる。
ジョセフ・ファインズの演じるダニロフは、友情と嫉妬のはざまで揺れ動く難役。ラストに向かって破滅的に突き進むその姿は、もう一つの悲劇の主人公でもある。
エド・ハリスは、ナチス側の凄腕スナイパーとして登場。静かなる緊張感を全身で表現するその演技はさすがの一言。
さらに『ヘルボーイ』で知られるロン・パールマンも脇を固め、キャスト陣の層は非常に厚い。
印象的なラブシーン
本作でも特に記憶に残るのが、ジュード・ロウとレイチェル・ワイズが戦場の片隅で人知れず愛し合うシーン。過酷な現実の中で芽生えた刹那の安らぎ。声を出すこともままならない中、身体と言葉で心を通わせるその演出は、戦争映画としては異色の美しさと生々しさを兼ね備えている。
エンディングと余韻
最終的にヴァシリとターニャは奇跡的に生き延び、戦後に地方の病院で再会する。命のやりとりを超えて結ばれた二人。このラストの余韻は静かな感動を呼ぶ。
ジュード・ロウ演じるヴァシリが「戦争が終わったら工場の監督になりたい」と語るシーンがあるが、ラストではそんな平穏な日常が想像できてしまう。きっと二人は結婚し、普通の生活を取り戻すのだろう。
まとめ
『スターリングラード』は、単なるスナイパー映画でもなければ、戦闘描写が売りの戦争アクションでもない。命を削る戦争の中で、人がどのように希望や愛を見出していくのかを描いた、深い人間ドラマである。
「戦争映画は苦手」という人にもぜひ一度観てもらいたい、感情を揺さぶる一本。
コメント