【レヴェナント:蘇えりし者】レビュー|壮絶すぎる呼吸と復讐の物語
イントロダクション|アカデミー賞のその先へ
2015年公開『レヴェナント:蘇えりし者』は、あの「バベル」や「バードマン」で知られるアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督による、過酷すぎるヒューマン×サバイバルドラマだ。主演はレオナルド・ディカプリオ、相手役には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ。ディカプリオにとっては念願のアカデミー主演男優賞受賞作品でもある。
そして本作、個人的には星5つ中5つ。
ただし、観終わったら全身が筋肉痛になってるかもしれないのでご注意を。
あらすじ|熊が出る。いきなり出る。
舞台は19世紀初頭、毛皮交易が盛んなアメリカの辺境。ディカプリオ演じるハンター、ヒュー・グラスは、仲間とともに未開の地を進んでいた。ところが原住民との衝突、仲間の裏切り、そして最大の悲劇――野営中にメスのグリズリーに襲われるという凄絶な事件が起きる。
この熊、まさにゲームのボス級で、観てるこちらが思わず笑ってしまうほどエグい。
満身創痍となったグラスは“ほぼ死体”として見捨てられ、さらに目の前で息子を殺され、生き埋めにされる。
…という開幕からして、心が軽く壊れます。
テーマ|「息をしろ」がすべてを物語る
ただのリベンジムービーではない。
これは、「呼吸する」ということが、生きるという営みの物理的かつ象徴的なメタファーになっている作品だ。
「息をしろ。生きろ」。
かつて妻を殺され、息子を抱きしめながらそう言った記憶が、重傷の彼を突き動かす。
映画は最後、ディカプリオの「呼吸の音」で締めくくられる。
その静かな息づかいが、すべての痛みと生命を代弁している。
映像美と音の演出|自然が語り、沈黙が叫ぶ
この映画にはBGMがない。
あるのは、風の音、川の流れ、雪を踏みしめる音、そして呼吸。
これが逆に、すさまじい臨場感を生み出す。
画面は黄昏がかった色調に包まれ、自然の厳しさと美しさが一体となって迫ってくる。まさに“自然がもうひとりの登場人物”。映画館で観なかったことを後悔した人、多いんじゃないだろうか。
演技とキャスティング|ディカプリオの執念
この映画は、ディカプリオによる“体当たり芸”の集大成でもある。
冷たい川を這い、雪を食らい、内臓を取り出し、馬の死体に入る(マジで)。
ほとんどセリフがないのに、魂の演技だけで2時間30分を圧倒する。
フィッツジェラルド役のトム・ハーディも見事。嫌な奴なのに、どこかリアルで、単純な悪役ではない“人間のエゴ”がにじみ出ている。
総評|“復讐”ではなく“生”の映画
『レヴェナント』は、復讐劇に見えて、実は**「人がなぜ生きるか」**を問う作品である。
荒野で、傷ついた体で、それでも人は息をして、生きようとする。
だからこそ、この映画には意味がある。
ラストでグラスが観客に“無言で”視線を向けるカットには、まるで問いかけのような静けさがある。
**「お前は、それでも生きるか?」**と。
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