神の正義により呪われた者共が落ちる地獄、罪を浄めるために慈悲をかけられた魂が苦しむ煉獄を経て、ダンテは完全で純粋な人々の住む天国界へと進む。
彼を導くのは若くしてこの世を去り至高天から使わされた愛する女性・絶世の美女ベアトリーチェである。彼女と再会し、喜びとともにダンテの旅は続く。
第1歌〜月光天
すさまじい速さで天空へ登る二人、光の速さであろうか、気付くとダンテは月にいた。第1の天である月光天である。ダンテはベアトリーチェになぜ太陽の光がこんなに近いかについて質問するのだった。
古代の説では宇宙は4つの元素から成っている、火・空気・水・土。それらの宇宙にある元素から人の身体も構成され、それぞれの元素はそれぞれの然るべき場所へ自然に従って赴く。
つまり土は下方へ火は上方へ。であるからダンテが本来の性質に帰ったのである以上、天へと向かって登ることは当然のことだと教えられる。しかし現代科学やコンピューター・グラフィックスで宇宙空間の映像をモニター画面と肉眼で見る私たちにはどうだろうか。
アポロ号が旗を立てた月の映像を見る私たちにとっては?それは冒涜された自然であり汚された詩である。宇宙空間にはアイテールという火の上位互換の第5の元素があるとかつて推測できたが、この空間は虚無的死の領域のようにしか思われなくなっている。
また宇宙船やジェダイ・ナイトがワープしたり戦争したりする空間のように。SF映画と現実のイマジネーションがごっちゃにされ、混乱した認識を持たされてしまってるのだ。
果たしてダンテの「天国篇」が嘘っぱちなのか、宇宙船やエイリアンがそうなのか、どっちにしろ想像の世界であることに大して違いはあるまい。
第2歌〜天国の構成
第2歌ではベアトリーチェから天国界の配置についての説明が成される。まず父なる神がいる至高天、宇宙を動かしている原動天、ついで多くの数え切れない星々からなる恒星天、そして月火水木金土日の7つの星からなる天。
これらは今から順次巡られるのである。今いるのが第1の月光天である。つまり地球から一番近い星の天界だ。
第3歌〜アヴェ・マリア
天国界で最初に現れた魂たちにダンテは出会った。彼らはこれまでの人々と違って碧玉のガラスか聖書の水晶の海のような空間から、神秘的な生き物のように浮かび上がってきた。
第3歌ははなはだ美しい。グレゴリオ聖歌でも聴きながら読むと良い 😀 ダンテは天国界の魂の配置について説明を得る。
彼らは各々が各自の割り当てに満足し、低い天球から上へ登りたいとか、低い位置に不満を覚えることなく誰もが至福を味わっていると知る。
語り終えた魂は”アヴェ・マリア”を歌いながら再び月の光の中へ飲み込まれていった。