「ストーンヘンジとは何か?芸術と聖性をめぐる“最古の建築”の謎」

文明

巨石はなぜ立つのか?ストーンヘンジという“原始アート”の謎

イギリス南部・ソールズベリの草原に、突如として現れる石の輪。それがストーンヘンジである。誰が、なぜ、どうやって作ったのか――今なお多くの謎を秘めたまま、沈黙を守っている。

夏至の日、東の空から太陽が昇り、その光が「ヒール・ストーン」を貫いて一直線に中心を照らすという。まるで宇宙と対話していたかのように。

これはアートか、天文台か、それとも神殿か

ストーンヘンジの中心には、高さ7メートルに及ぶ門のような巨石が5組、円形に並ぶ。それはまるで巨大な鳥居のようでもあり、太古のゲートのようでもある。

周囲にはさまざまなサイズの石が配置されており、その配置が天体の動きと一致することから、「古代の天文台」だったとも、「儀式の場」だったとも言われる。

だが、もっと本質的な問いを投げかけてみよう――「彼らは、あれを美しいと思って立てたのではないか?」

自然と一体化しながらも、そこに“構成”という秩序を持ち込んだ。その行為自体が、すでに芸術である。風景を切り取る額縁としての建築。まさに「最古のアート作品」なのかもしれない。

その意味では、イースター島のモアイ像とも、ギリシャのパルテノン神殿とも、深いところでつながっている。

ストーンヘンジ

ブレイクの幻想絵画に見る“巨石の記憶”

私が愛するイギリスの詩人・画家ウィリアム・ブレイクは、まさにこの「古代のアート精神」を現代に持ち込んだ人物だ。

彼の版画には、しばしばストーンヘンジを想起させる構図が現れる。巨石のような建築、波打つ線、そして謎めいた象徴の文字。観る者を“非現実”へといざなう魔法のような画面構成だ。

ブレイクは言う。「古来、詩人こそが真の聖職者であった」と。

詩人は、天と地、人間と神話の間を往復し、言葉で世界を“聖化”する存在だった。現代では詩人が甘ったるい言葉をこねくり回す装飾家のように見なされているが、それは本来の姿ではない。

誰がその場所を“聖地”と決めるのか

ストーンヘンジが聖なる場所であるのは、役所がそう指定したからではない。作った者たち自身が、この場所を“聖なるもの”にしたのである。

夜の闇の中、火の明かりを囲み、彼らは沈黙のまま空を見上げていたかもしれない。そのとき、天と地と人との間に「何か」が流れた。

芸術とは、場所に意味を与える行為である。つまり――

場所は芸術家が「ここだ」と言えば、その瞬間から聖なる場所になる。

これは、アンデスの迷宮神殿「チャビン・デ・ワンタル」でも同じだった。地下神殿の中心に立つ神「ランソン」。誰かがそこに神を見出し、そこに立てたことで、空間が聖地となった。

ストーンヘンジとは、ただの石ではない。「石を聖なるものへと変える力」の記録であり、それを行った者たちの美意識の結晶なのだ。


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