要約
ウェルギリウスと暗い森で出会ったダンテは、師匠の導きで地獄巡りへ赴く。だが山の頂から急斜面を見下ろして怖気付く素人スノーボーダーのように、やっぱりやめようという気になる。そこでウェルギリウスは彼を励まして、天国のベアトリーチェがダンテを助けるために自分を遣わした理由を語る。(第2歌)
そこで心機一転、ダンテは元気を奮いおこし深い谷底へと降りて行くのだった。
ダンテの地獄
ベアトリーチェ
この天国にいるベアトリーチェとは、ダンテが9歳の頃にお祭りで出会った同じ年の少女である。18歳の青年になってから美しく成長した彼女に再会し、恋に狂い多くの詩を作った。しかし彼女はよそへ嫁に行きさらに24歳で病気で死んでしまった。激しい衝撃を受けたダンテは彼女に対して歌った詩集を解説付きで出した。「新生(La Vita Nuova)」がそれである。
その後10年間ダンテは自堕落に生きることになる。「神曲」はベアトリーチェを天国の至高天に置き、永遠の女性として崇める一大叙事詩と言ってもおかしくない。後に記述はするけれども「神曲」の構造は地獄・煉獄・天国であるが、次の煉獄へは地獄の底を貫通しないと行けないようになっている。また地獄は先細りの漏斗状になっていて底に行く程狭くなり、地球の中心で重力を反転させて煉獄に出るのである。ベアトリーチェは煉獄の山の頂上で降臨し、ウェルギリウスから案内を引き継いでダンテを天国界へ連れて行く。
地獄の門
「私をくぐる者は一切の希望を捨てろ」云々という言葉が地獄の入り口にある門に銘打たれている。ダンテはこれはキビしいなぁ、と師匠に言う。門を通るとまず、この世の罪人のうちで最も一般的で最も多数存在する「大衆」がいる。
大きな悪も成さずかといって善には程遠い輩で、この世に対する思い入ればかりは極めて強い。死に対する希望もない連中、とウェルギリウスに揶揄されている。であるから地獄の一番浅い地点でさまよっているわけだ。
三途の河
ドラクロワ「ダンテの小舟」
少し進むと三途の河にあたるアケロン川が流れており、舟の渡し守の恐い爺さんカロンがいて二人を怒鳴りつける。凄まじい量の亡者どもが行列を作ってアケロン川を渡っていく。ロマン主義の画家ユージェーヌ・ドラクロワの絵が有名だ。その時地獄の暗闇が激しく振動し、雷鳴が鳴り響くとダンテは卒倒し気を失う。丸太のようにぶっ倒れたであろうダンテの記憶はここでいったん途切れ、第3歌が終わる。
◯次の回はこちら→ダンテ【神曲】まとめ(3)〜「地獄篇」第4歌・第5歌・第6歌
●「地獄篇」コンプリート→ダンテ【神曲】「地獄篇」〜まとめのまとめ〜