哲学的偏見

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【形而上学】地獄はあるのかどうか、精神および魂の不死〜ルクレーティウスに寄せて

物質と精神のあいだで地元の図書館から借りてきたルクレーティウスの『物の本質について』を読んでいる。著者は、精神や魂は死とともに消滅すると主張する──その一節に出くわしたとき、一度は本を閉じた。しかし、いや待てよと思い直し、読み進めているとこ...
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【バフォメットとは何か?】悪魔と山羊の象徴・角の意味を読み解く

【悪魔と山羊】バフォメットの角はなぜ象徴なのか?中世ヨーロッパの魔女裁判、あるいは近代オカルティズム、あるいはブラックメタルのCDジャケット──そこに必ずといっていいほど現れるのが、山羊の頭をもった謎めいた存在、「バフォメット」である。この...
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「生命の樹」と性欲の哲学──ミルトンとブレイクから読む禁断の知

ミルトン【失楽園】「善悪の知識の樹」について〜情欲の発端となる想像(イマージュ)「生命の樹」『創世記』によれば、楽園エデンの園の中央には「生命の樹」があり、そのすぐ隣には「善悪の知識の樹」があったという。神はアダムに向かって、「この樹の実だ...
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アリストテレスの“第9のもの”とは何か|天動説・宇宙論・形而上学の核心に迫る

アリストテレスと「第9のもの」──天動説と宇宙論の哲学的展望古代ギリシャの哲学において、地球は不動の中心であり、そのまわりを天体が巡るという天動説が当然の前提とされていました。アリストテレスの宇宙論も、この天動的世界観を土台に構築されていき...
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プラトン『国家』第8巻の“生成を規定する数”を読み解く|幾何学と魂の周期

「国家」第8巻と“生成を規定する数”プラトンの『国家』第8巻には、「生成を規定する数」と呼ばれる謎めいた幾何学的な文章が登場する。全著作中でもっとも難解とされるその一節を、まずは岩波文庫・藤沢令夫訳から引用しよう。書き出し:すべての生成物は...
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プラトン『国家(下)』レビュー|洞窟の比喩と“影の世界”に生きる私たち

前回の記事では、現実世界と“似像”の世界とのあいだにある比例関係について書きました。水に映る月と空にある月、絵画とそのモデル、エロビデオと現実の性愛体験――それらの関係性において、似像とはあくまでも「写し」にすぎず、リアリティは常に劣化して...
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プラトン『国家(上)』レビュー|線分の比喩とイデアの比例で読み解く哲学的リアリティ

作品概要古代ギリシャの哲学者プラトンによる対話編『国家』は、彼の著作の中でも特に長編に分類される作品です。「正義とは何か?」という問いを掲げながらも、冒頭から第5巻まで(岩波文庫版では上巻)は、理想国家の設計図のような内容が延々と続きます。...
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精神指導の規則(デカルト)レビュー|明晰さと確実性の哲学を現代に読む

概要『精神指導の規則』は、17世紀フランスの哲学者ルネ・デカルトの死後に発見され、未完のまま刊行された著作です。断片的でありながら、彼の哲学的思考の核心を垣間見ることのできる重要な遺稿であり、長らく「隠れた名著」として多くの読者を魅了してき...
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プラトン『ティマイオス』覚書――宇宙と魂をめぐる幾何学的神話

【プラトン『ティマイオス』覚書】宇宙・魂・元素、すべては数学から生まれた岩波書店の『プラトン全集・第12巻』に収められている対話篇「ティマイオス」。これを約20年ぶりに再読し、その内容の要点や印象深い箇所をメモのようなかたちでまとめておこう...
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【ヘルメス・トリスメギストス】まとめ――「全」「1」「言葉」をめぐる哲学断想

言葉とは何か言葉とは何だろうか?バイブル的には「言(ロゴス)」によって世界が創造された。魂を生かす糧であり、神の子そのものでもある。一方、地上的には人間の口から発せられる音、鼓膜に届く空気の振動に過ぎない。言葉は音声だけでなく、文字として紙...