2025-04

小説

【谷崎潤一郎『神童』感想】天才児が堕落するまで──食欲・性欲・美への転落劇

中公文庫「潤一郎ラビリンス」シリーズⅢに収められている、谷崎潤一郎の短編小説「神童」を紹介する。潤一郎ラビリンス「潤一郎ラビリンス」シリーズは谷崎潤一郎の中短編をまとめたもので、あまりの面白さに全16巻を大人買いしてしまった(笑)。とはいえ...
小説

【泉鏡花『高野聖・外科室』ほかレビュー】難解だけど魅力的な短編集を読む

難しい文章泉鏡花──その名を聞いたことはあっても、実際に読んだ人はどれくらいいるだろう。そんな疑問を抱かざるを得ない。筆者も中年になってから、ようやく「高野聖」を手に取った。その評判通り、文章の難しさにまず打ちのめされた。鏡花は明治生まれ、...
小説

【泉鏡花『琵琶伝』感想】悲恋と血の結末──月夜に響く鸚鵡の声

遺言泉鏡花の短編小説『琵琶伝』は、明治29年1月、『国民之友』誌に発表された。当時は、親が決めた相手と強制的に結婚させる風習がまだ色濃く残っていた時代。お通という若い娘は、従兄弟の謙三郎と互いに想い合いながらも、親族間で取り決められた陸軍尉...

【マンディアルグ『大理石』註解】血と狂気を越えて──透明な世界への旅

フランス語原文と澁澤龍彦訳を参照しながら、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの『大理石』を可能な限り註解する。Grand Spectacle(大いなる光景)マンディアルグは、極めて慎み深い師である。彼が小説という形で遺した『大理石』は、...
小説

【マンディアルグ『燠火』】夢の螺旋と崩壊した現実|夜の馬車と舞踏会の果て

【マンディアルグ】名作短編「燠火」紹介・レビュー〜夢の中の夢を見ている気分「暖炉」という暖房法が、現代の生活から遠ざかって久しい。そのせいか、「燠火(おきび)」というタイトルには、どこか懐かしく、ノスタルジックな響きが漂う。今回は、アンドレ...
哲学

『易経』とは何か?占いを超えた陰陽の思想と未来を読む知恵|哲学としての周易入門

『易経』とは何か?──占いを超えた古代の哲学書概要『易経』──その名は知っていても、長らく手の出ない書であった。なぜなら「占い=迷信」というイメージが強く、かつてキリスト教の神に心酔していた筆者にとっては、最も忌避すべき異端の書と思われてい...
哲学

【形而上学】地獄はあるのかどうか、精神および魂の不死〜ルクレーティウスに寄せて

物質と精神のあいだで地元の図書館から借りてきたルクレーティウスの『物の本質について』を読んでいる。著者は、精神や魂は死とともに消滅すると主張する──その一節に出くわしたとき、一度は本を閉じた。しかし、いや待てよと思い直し、読み進めているとこ...
哲学

【バフォメットとは何か?】悪魔と山羊の象徴・角の意味を読み解く

【悪魔と山羊】バフォメットの角はなぜ象徴なのか?中世ヨーロッパの魔女裁判、あるいは近代オカルティズム、あるいはブラックメタルのCDジャケット──そこに必ずといっていいほど現れるのが、山羊の頭をもった謎めいた存在、「バフォメット」である。この...
哲学

「生命の樹」と性欲の哲学──ミルトンとブレイクから読む禁断の知

ミルトン【失楽園】「善悪の知識の樹」について〜情欲の発端となる想像(イマージュ)「生命の樹」『創世記』によれば、楽園エデンの園の中央には「生命の樹」があり、そのすぐ隣には「善悪の知識の樹」があったという。神はアダムに向かって、「この樹の実だ...
エッセー

作文「雪だるま」と先生のぬくもり──昭和の記憶から

母の死そして、婆ちゃん・爺ちゃんと私の母は二歳のとき事故であっという間に亡くなってしまった。だから賢明な努力をして母のことを思い出す。それからは婆ちゃんが母親代わりになり、爺ちゃんと三人で四畳半で寝起きする生活がスタートした。なんで今日から...