哲学

プラトン【パルメニデス】「イデアについて」要約・レビュー〜異色作を紹介

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岩波書店プラトン全集4巻収録の「パルメニデス」とはどんな本なのか、まだ読んでいらっしゃらない読者に代わってレビューしてみたいと思う。

きっかけ

今回この本を読んでみようとなったきっかけはつい昨日20年ぶりに「ティマイオス」を読んで思考が麻痺したからでもあるが、20代当時から所持しているティマイオスの英本に「パルメニデス参照」という自分自身の書き込みがあったためである。

この不可思議な本とパルメニデスがどのように結びついているのか、すでに忘れていたため確かめて見たくなった。

さて読んでみると確かにティマイオスの内容に関係のある部分があった。すなわち「有」と「同」と「異」についての果てしない議論である。

そしてこの150ページで延々と論議されているのは「1」についてであった。ティマイオスでは宇宙はただ一つのものとして造られた、と書かれておりこの点でも関係が深いことがわかった。

ちなみにティマイオスの書き出しは「1、2、3」である。

概要

「パルメニデス」は恐るべき本である。私はこれに似たようなプラトンの本として「テアイテトス」を記憶していたが、「パルメニデス」のことはすっかり忘れていた。

両者に共通して言えるのはどちらも漠然とした、つかみどころのない対象について膨大なページを割いて論じている点であった。

ゆえに一般読者の方々にはどちらも読むことをお勧めしないし、読んだところでわけがわからないばかりか、退屈すぎて腹が立つであろう。

「イデアについて」の副題はあるがむしろ「1について」にした方が正確のように思われる。なぜならプラトンの得意とする「原型と被造物」、「絵画と現実」間にある関係といったイデア論は全く書かれていないからだ。

魚が水の上から頭を出して地上世界を初めて観るように、人も空気の層を突き抜けるならば彼方のイデアの世界を垣間見るのである。

テアイテトス

「テアイテトス」では最終的に人間の言語の空気の振動性に気づかされることだろう。「マルドロールの歌」と同じ効用である。

人間の言語には意味はない。それは何も語っておらず、音節の集まりが舌から発せられて鼓膜に到達しているだけである。例えばテレビの音がそれである。

同じく「パルメニデス」読後は視覚をバラバラに分解するように感じた。というのは何10ページもにわたって「1」について考えさせられ、もし「1」がなかったならという有りえない仮定に思考が慣らされるからのように思われた。

「1」が一体なんなのかは本の中では説明はない。しかしティマイオスやヘルメス文書やバイブルに従うなら「1」とは神を指すというのは疑いえないものと思われる。

「1」すなわち神の不在によって知覚される認識は、デカルトの説く「混乱した認識」にも似ている。もし宇宙が一つで有り自然が一つであるのなら、「1」無き自然とはどういった性質のものであるか。

「パルメニデス」ではこう結論している。すなわち「1」がもし無ければ「多」もまた無いことになり、そのようなものは「塊」(フランス語でMass、『群衆』を意味する語でもある)なのである、と。

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