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【プラトン】「クリトン」行動はいかにあるべきかということについて〜レビュー

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プラトンの著作「クリトン」は短い。ソクラテス最後の日々を綴るプラトン全集第1巻に収録されていて、「パイドン」で亡くなるソクラテスを仲間のクリトンたちで助けようと申し出る。言わば保釈金みたいのを看守につかませて逃がそうと言うのである。

ソクラテスのダイモン

愛すべき弟子の説得にも応じることなく、ソクラテスは自らのダイモンがここに留まり、国の下した判決に従うのこそ最上の選択だと自分に言っていると答える。度々本の中に登場するあのダイモンである。

ダイモンとは人気コミックブック「ジョジョの奇妙な冒険」におけるスタンドに近いものだと思っていただければ良い。ただし自分が操るのでなく自分に命令を下すスタンドである。

ソクラテスのダイモンは彼に何かをすることを止めることが多かった、と言う。これに対してあることをするようにそそのかすダイモンも存在する。

運命に従うことの徳

クリトンに対するソクラテス曰く、自分はアテナイという優れた国家が大変気に入っていて、かつて兵隊に出た時を除いてはほとんどこの都市から出たことはない。今まで生きてこれたのはアテナイのおかげであり、両親が自分を生み育ててくれたのもそうである。また自分に学問を教えてくれたのも国の法律があってのことである。今回自分は訴えられて死刑になるとしても、その判決は今まで世話になったアテナイの国家が決めた法律なのだから、それをないがしろにはできないと言うのである。

であるからもし判決を無視して他国へ逃れるようなことをしたとしても、何も良いことはない。むしろ自分のダイモンはこのままここに止まることが最上である、と言っているのであるし、もしそうでないと自分が判断するのなら、すぐにでもここを出ようと答える。

またソクラテスは両親、つまり父親や母親に対して子孫が対等ということはありえないこと以上に、市民が国家に対して対等ということはないと言っている。古来中国の儒教みたいな教えだが、一理あるのではないだろうか。もし皆さんの親に腹が立ったりすることがあったら、ソクラテスの言葉を思い出してほしい。

まとめ

正義のために死すことや不正を犯すよりは死を選ぶといった、読むと勇気が湧く話は裁判最中の「ソクラテスの弁明」で読める。

次の「パイドン」では毒を仰いで亡くなる直前まで議論し、智を探し求める哲学者の姿が見てとれる。「クリトン」は国が下した判決から逃げ出すのは適当ではないし、見苦しいからこのまま牢屋に入っていようと結論を出したソクラテスの対話篇だ。最上であると理性が判断した行為を行う、人生はその連続である。したがっていま牢獄で死刑を待っていることも、きっと良いことに違いない。

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