小説

【城の中のイギリス人】マンディアルグのエロティシズム小説

更新日:

ポルノグラフィティと呼ぶべきかエロティシズム文学と呼ぶべきか。マルキ・ド・サド的悪の教典でありながら、マンディアルグ本人いわくシュルレアリスムの代表的な作品である。エロティックな内容を含みつつも本全体に芸術の奔流が流れており、ただのエロ小説とは圧倒的に異なる。

澁澤龍彦

発禁になった1953年の匿名による秘密出版時のタイトルは単に「イギリス人」であった。その後「閉ざされた城の中で語るイギリス人」に変更されたのであるが、それは1979年のガリマール版でであった。作者が名乗りを上げたのもこの時である。秘密出版や匿名出版、発禁とかは筆者が若いころはずいぶん憧れて、一般大衆なんか相手にするものかとイキがっていたものである。ちなみに白水社から出ている澁澤龍彦の日本語邦題は「城の中のイギリス人」である。彼はこの本を密かに自分だけで楽しみたかったものだろう。故三島由紀夫氏が生前澁澤に再三お願いして、渋々翻訳を進めたようである。当初邦訳部分が本全体の3分の1程度しかなかったのは、突然三島が死んでしまい訳を続けるモチベーションを澁澤が無くしたからだそうだ。必然的に三島由紀夫はこの本を最後まで読めなかった(笑)。この作品に限らず澁澤龍彦は三島の西洋学の構築のために、多大な寄与をしているのではあるが。

◯三島由紀夫関連記事はこちらにたくさんあります→【三島由紀夫】作品レビューまとめ〜当サイトによるオリジナル版〜

海の上の城

満潮時になるとただ一本の道さえ海の中に沈み、外界と往来不可能になる海の上に浮かぶ城「ガムユーシュ」。城主曰く「常住不断に勃起したずんぐりした男根」、この城の中でモンキュなる人物は世間から隠遁し己の欲望の研究に日々没頭している。要塞のような造りの城は高い城壁で囲まれ、人間社会の習慣や法律から完全に隔絶されていた。ただ主人の欲望の衝動があるばかりであり、次の瞬間に何が起こるかは誰も予想できない。晴れていた青空がいつ曇りだし大荒れの天候に突然変わるかもわからない。

モンキュはここに誘拐してきた犠牲者たちを幽閉し、好きなことをして遊ぶのであった。しかしサドの本のように延々と残虐なエロティック描写が続くことはない。要所要所をおさえたストーリー展開となっているので飽きずに読むことができる。また本の半ば過ぎに差し挟まれた「モンキュ語録」は、怪物である暴君の独特な哲学を語っていて興味深い。

城の名前「ガムユーシュ」はフランスの卑猥語でシックスナインのことである。

女たち

モンキュの城の中で繰り広げられるエロスの饗宴で、快楽の機械として登場する美女たちのうちでも、私は冒頭で主人公を激しい勢いでフェラチオするヴィオラと、巨大な氷の男根をアナルに突っ込まれる美尻の持ち主エドモンドが大好きだ。ヴィオラは小柄で17歳、白黒混血のうっとりするような美女で、私は勝手にシュルレアリスム女流画家のレオノール・フィニーを想像した。エドモンドはお尻大好きマンディアルグの欲望が具現化した対象なのであろうか。

モンキュ(mont-cul)とはフランス語で「尻の山」である。誠に女性のお尻というものは、拝むためにこの世に生まれるだけの価値がある。他にも「温かい糞」を意味する名前のルネボルゲ・ド・ヴァルムドレック嬢も登場する。

晩餐

見所として豪奢な食事がある。黒人女の糞を食ったり、城の色々なユニークな住人が紹介される。様々な余興を楽しみながらエロティックな夢想に耽ることができる。前述の氷の男根を使った処刑や、少女をブルドッグに犯させたりと楽しい限りである。またルネが城に来た経緯がモンキュによって促され語られる。至れり尽くせりの饗宴だ。

大爆発

乱痴気騒ぎの末、モンキュは城の地下室に大量に貯蔵されていた爆薬で城ごと木っ端微塵に吹き飛ばす。モンキュがもはや射精することができなくなった時、大空に向かって城は盛大に射精したのだった。もともとモンキュは射精するために非常な努力を要すると告白していた。爆破はいつでもできる状態になっていて、城主がボタンをすぐ押すことができた。

爆発の跡にはクレーターのような大きな穴だけが残り、それすら引いては寄せる海の波が洗い流し城の名残はもう何もない。

モンキュの欲望は決して建設的なものではなく、貯蓄とか生産とか繁栄といった性質のものではない。石が重力に逆らえず下へ落ちるように、時限爆弾のように最期の暴発へ向かって走るのみである。作者いわくこれぞ黒い神エロスを描いた姿なのである。

◯マンディアルグ関連はこちらの記事もどうぞ→マンディアルグ短編集【狼の太陽】収録「生首」あらすじと感想

スポンサーリンク

-小説

Copyright© xアタノールx , 2018 All Rights Reserved.