三島由紀夫【近代能楽集】の楽しみ方を紹介〜日本の伝統芸能「能」の魅力

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その本の名前を聞いても?となってしまう現代の読者たちのために、三島由紀夫の「近代能楽集」とはどんな内容なのか簡単に紹介する。

「近代能楽集」とは

これは日本の古典芸能である「能楽」の演目八編を、近代の舞台に置き換えて再解釈した戯曲集である。

日本古典に精通すること抜きん出て、かつ日本文化を己の命のように愛した三島由紀夫ならではの仕事。

西洋ではそういった試みは珍しくなかったことが、英訳者でコロンビア大学名誉教授・ドナルド・キーン氏の解説にも書かれている。

能は様式と普遍性がギリシャ古典劇との共通性でもあり、音楽性はイタリアのオペラなどにも比較されるというインターナショナルな文化である。

「能楽」について

能は演目や道具、衣装、面、舞台など全て様式化されている。何でもありではないのである。

能についてとりあえず知りたいならこちらのサイトが親切で、筆者のように何もわからない人でもかなりの知識が得られる。→the能ドットコム

「近代能楽集」に扱われている能の演目と筋書きは、全てここで読める。であるからまず三島の戯曲を読んだら、本家のストーリーをサイトで読む。

さらに興味が沸いたらYoutubeなどで実際の舞台を観る。役者の動きや演奏、音楽など全て楽しめる。

三島を読むことで入りづらい難解な古典芸能への扉がやすやすと開かれるから、疎い方々も日本の文化のかっこよさ・素晴らしさに気付くことだろう。

それらの動画の評価をしている人たちは、むしろ外国人であり英語のコメントが多い。生粋の日本人より外国人の方が能楽に興味を持ち、その良さがわかるというのは何とも恥ずかしい限りである。

演目について

本についているあとがきによると三島は、近代化に耐えうるような普遍的な能の演目は8〜9つくらいしかない、と判断したそうだ。

能の演目は百以上もあるようであるが実際「近代能楽集」に入っているのは八つであり、少なく感じるかもしれない。しかしこのことは三島がめぼしい演目は全て網羅したであろうことを語っている。

順に述べる。漢字は難しいが読み仮名がついている。邯鄲(かんたん)、綾の鼓(あやのつつみ)、卒塔婆小町(そとばこまち)、葵上(あおいのうえ)、班女(はんじょ)、道成寺(どうじょうじ)、熊野(ゆや)、弱法師(よろぼし)、である。

これらは実際の能楽の演目であるが、話は意外と単純でわかりやすい。だがそれは三島がいるから入りやすいわけで、いきなり観にいってもわけがわからない。

かれの英訳があるおかげで、外国人もAoino-ue、Yuya、Dohjojiなどの能楽の存在と魅力を知る。何という素晴らしい功績であろうか。

筋について

これら演目自体の筋はここで解説するよりも、the能ドットコムで観ていただく方が早い。しかし三島の「近代能楽集」においては元のストーリーがあらかた捻じ曲げられている。本家はハッピーエンドなのに三島はそうでないなど、むしろよく正反対の結果になる。

また取り上げられた演目の主題は超自然なものが多い。妖しげな夢、生き霊や死霊も出てくる。まるでハムレットばりだ。舞台は能の伝統にのっとっていたってシンプル。そこでセリフの持つ力と激しい情念によって魅せるところは、同じく能と新劇を融合させた傑作「サド侯爵夫人」に通ずる。

「サド侯爵夫人」のフランスの劇団による79年来日講演は、何の舞台装置もなく直立不動でセリフを述べるだけの役者たちによる演出だったというほどだ。

◯「サド侯爵夫人」についてはこちらへ→三島由紀夫【サド侯爵夫人】わかりやすく紹介・2018年最新

能の魅力

筆者も三島由紀夫のおかげで日本古典芸能に目覚めさせられた者だが、私の感ずる能楽の魅力について少し。

どんな演目でも変わらない背景の松、舞台の建築、寸法などの様式は、退屈な規則のように思われるかもしれない。だがこのシンプルさが渋くて実に良い。

あと掛け声「よぉぉぉぉ、よぉぉぉぉ」というあれ。太鼓・小鼓の音、仏教観のある歌、笛。舞と呼ばれる演者の独特の動き。

物静かかと思えば突然激しく入り乱れる感情の動き。能面、衣装の美しさ・妖しさ。全て日本にしかないもので埋め尽くされている。

日本文化の良さ・かっこよさを再確認させてくれる、三島由紀夫に感謝&合掌。

◯その他の三島由紀夫作品レビューまとめはこちらへ→【三島由紀夫】作品レビューまとめ・2018年2月版

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