ウィリアム・ブレイク【天国と地獄の結婚」】「知覚の扉」プレート版画について

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自ら印刷技術を発明

「天国と地獄の結婚」は全部で27枚のプレートからなる銅版画で挿絵付きの詩というか詩の刻まれた絵というか、ブレイク独特の芸術手法によって印刷された作品である。ブレイクの詩は預言の書とも呼ばれるように、整然と並ぶ英単語が地平線に佇む建物のように見える文章なのだ。一度は挿絵付きの原文を読んでみていただきたい本である。

この人は自分で絵を描きオリジナルの印刷技術も発明していたから、出版社から完全に独立して自分のやりたいように仕事をしていた。数々の個性的な作品が他に類を見ない程の凄い出来なのは、まさしくそんなブレイクの才能と努力と信念のゆえであろう。身近なところではスティーブ・ジョブズなども才能を持っていただけでなく信念を貫いた偉人だ。

「知覚の扉」のプレート

以前の記事で取り上げたドアーズのバンド名の由来となった「知覚の扉」の詩がある銅版画に、これに関連した興味深いくだりがあるので紹介しようと思う。14枚目のそのプレートには他にもこんな記述がある。

"六千年の終わりに世界が火によって焼き尽くされるという古の言い伝えは 私が地獄から聞いたところによれば真実である

なぜなら燃えさかる炎の剣のケルビムは これによって生命の樹の守護を離れることを命ぜられるから

そしてその時全創造物は焼き尽くされ無限で神聖なものとして現れる たとえいま限りある腐敗したものとして現れていても"

そしてウィリアム・ブレイクは地獄の印刷技術がこれを可能にすると言っている。すなわち目に見えている視覚が捉える表面を溶かして引き離しながら、隠されている無限を陳列・表示させるのだという。

◯ウィリアム・ブレイク関連記事→ウィリアムブレイクの詩とザ・ドアーズについて

無限の世界を現出させる

感覚について考察を始めると、ルネ・デカルトが「方法序説」で書いたように感覚されるものは偽である、みたいな結論にすぐ走りそうになる。そこはガマンして冷静に時間を、場所を心の眼で観察してみよう。すると感覚される世界は現在という時と場の中で流動しているのが分かると思う。過去や未来を考えずジェダイ・ナイトのようにひたすら現在に集中する。故ブルース・リーも「燃えよドラゴン」で教えている。考えるな、感じよと。

感覚が捉える物をじっと見つめていると感覚されていないものがあることに気付くと思う。感覚されるものが存在する全てではないのだから。土星は昼間は見えないし触れないけれども存在することは知っている。同じように見えないもの、聞こえないものつまり感覚から隠されているものらが存在する。ブレイクの絵においてはこれらの隠された事象が、現実の薄い表面の粘膜を突き破って出現する様が描かれる。その粘膜を溶かすのが腐食性の地獄の印刷技術というわけだ。隠された事物が現れるまで、溶かして溶かして溶かしまくる作業がそれなのだ。

ブレイク詩集―無心の歌、経験の歌、天国と地獄との結婚 (平凡社ライブラリー)

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