絵画

【ゴヤ】闘牛士・巨人・マハたち〜力強い狂気・エロスに満ちた画家と作品

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画家フランシスコ・デ・ゴヤ(スペイン、1746-1828)の絵画作品をレビュー・紹介。アイキャッチ画像は「気狂い病院」(油彩画、1819年)。

自画像

ゴヤの絵には何から何まで黒いエロスに取り憑かれた、凄まじい狂気が漲っている。1815年の自画像は現実と幻想が入り混じった恐怖世界の虜のような表情をしている。

自画像(1815年)

と言ってもヴィンセント・ヴァン・ゴッホのように自己の肉体の破壊へ向かったりはしなかった。真正面から地獄の悪鬼らを見つめることができた、稀有の芸術家である。ゴヤは病気で46歳ころ耳が聞こえなくなった。この絵の時はすでに聴力が失われていたということだろうか。

闘牛士

有名な作品はいろいろあるけれども、特に筆者にとって印象深い作品を上げていこう。

まずは版画の連作「闘牛士」シリーズ。荒々しい競技に熱中する人々の興奮が伝わってくるかのようだ、”闘牛”はエロティシズムを象徴するものとして文学・芸術作品に頻繁に登場する。

闘牛士

●参考→【城の中のイギリス人】マンディアルグのエロティシズム小説

ジョルジュ・バタイユ【眼球譚】〜狂気のエロティシズム小説を紹介

巨人

次に「巨人」シリーズ。逃げ惑う人々の真ん中で佇立する怪物。または寂しそうに背を向けて孤独に座っている巨人、など何れにしても友なき化け物の悲しさを感じさせる切なさがある。

巨人

マハたち

当時の娼婦だったのかもしれない遊女”マハ”と呼ばれる女たちを描いた「着衣のマハ」「裸のマハ」は有名である。

同じ構図で同一人物の油絵が二つあり、一つは服を着ており一つは何も身につけていない。衣服を剥ぎ取られた女の羞恥の表情が妙にいやらしい作品。

着衣のマハ

裸のマハ

ちなみに映画「タイタニック」でディカプリオがローズの裸の絵を描くが、その構図はゴヤの作品から明らかに真似たものと思われる。

「黒い絵」シリーズ;我が子を喰うサトゥルヌス

では佳境に入ったところでゴヤ晩年の一連の作品『黒い絵』に移ろう。『黒い絵』はゴヤがマドリード郊外に購入した別荘に、自分で描いて飾っていた14枚の壁画作品。ゴヤの絵の中でも一番気が狂っている。全て素晴らしいが、めぼしいものをピックアップしていく。

我が子を喰うサトゥルヌス

「我が子を喰うサトゥルヌス」は筆者の一番好きなゴヤの絵のひとつ。サトゥルヌスは神話の神のことだが、土星に付けられた名前でもある。ボードレールの「破壊」という詩にふさわしい凶暴な絵である。

◯ボードレールの詩はこちら→ボードレール【悪の華】まとめ記事〜作品レビュー集

運命の女神たち

「運命の女神たち」は3人の神話の女神をさす。しかしゴヤの『黒い絵』では悪意に満ちた笑いを浮かべ、地を浮遊しながら人間たちを陥れようとする魔女たちである。

運命の女神たち

棍棒での決闘

殴り合いまたは「棍棒での決闘」は、1対1の男の血なまぐさい争いの絵。吐き出される息、分泌するアドレナリン、棍棒で殴られる頭蓋骨の鈍い音が響いてくるかのよう。

棍棒での決闘

魔女の夜宴

「魔女の夜宴」は中世ヨーロッパで行われていた魔女による信者集会であり、澁澤龍彦の「黒魔術の手帳」などでより知ることができる。悪魔の象徴である黒山羊の頭部を被った教祖が、邪悪な妄想に囚われた人々に教えを垂れている。この集会は一般に”サバト”という名で知られている。

魔女の夜宴

画面右端には魔女音楽を奏でていると思しき、小さなアコーディオンを持った信者が座っている。いったいどんな不気味な音楽なのだろうか。

砂に埋もれる犬

犬もしくは「砂に埋もれる犬」は、絶望的な無力さを感じさせる。背景のどんよりした大気は、犬を飲み込む土の元素・砂と同様に重苦しく空気の元素がかわいそうな動物を殺そうとしている。

砂に埋もれる犬

自慰する男を嘲る2人の女

名残惜しいがこれで最後にしよう。「自慰する男を嘲る2人の女」は、おそらく手元で下半身を擦っている間抜けな顔をした男を、嫌らしくにやけながらバカにしている女が描かれている。心当たりのある方は、かつて「悪習」と呼ばれたマスター・ベーション行為を少し控えた方が良いかもしれない。

自慰する男を嘲る2人の女

まとめ

ゴヤという画家がどんなテーマを好んで描いていたか、どんな芸術家だったのか、大体お分かりになったことと思う。人間社会は恐怖と欺瞞に溢れかえっている。新聞の一面記事にでかでかと表記される”事件”は、よく考えてみれば言うほど重要でないことが多い。

ゴヤの描く悪魔達が人々を騙し、見せかけの善でそそのかし、破滅へと導いているのかもしれない。少なくともゴヤは、現実世界にある見えない悪意の力を見ることができた偉大な画家・芸術家だと言える。

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