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マンディアルグの【黒いエロス】〜見直されなければならないエロティシズムの定義

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マンディアルグの短編評論

フランスの詩人・作家アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの短編評論「黒いエロス」は1958年刊『月時計』に収録されている。邦訳で身近なのは澁澤龍彦の『ボマルツォの怪物』(河出文庫)で読むことができる。河出文庫版で10ページそこそこの短いエッセイであるが、簡潔明瞭にエロティシズムについて作者が語っている。それは時として難解なマンディアルグの作品を紐解く上で役に立つし、自慰愛好者で溢れかえる現代社会のオカズというものについて考える機会にもなる。

「イギリス人」との関連

まず表題の「黒いエロス」についてだが、同じくマンディアルグは「閉ざされた城の中で語るイギリス人」という小説で、「エロスは黒い神である」という結びの文句を使った。これはその単文をそのまま分解・拡張したエッセイとも取れる。エロスはギリシャ神話では性愛を司る神であり、現代においては様々な性的嗜好を含んだ情欲の対象を指す代名詞でもある。

発表時の時代背景

この短い評論が発表された1958年という時代背景として、第2次世界大戦後の復興期に世界が21世紀のオカズ天国に向かって躍進していた事情を考慮する必要があるだろう。アメリカの自由の女神に象徴される性のパラダイスはこの頃まだ未完だったのであり、いまのように何でもありではなかった。最初に言語が歪められ、万人によって拡大解釈され、結果的に無意味になった。「エロティシズム」はそのような言葉のひとつだった。

自由の女神

自由の女神は1884年にパリで完成し、船でアメリカに運ばれ1886年に竣工した。アメリカの成人向け動画サイトを見るたびに、彼女のことを思わずにいられない。無修正動画が見放題である。よくもここまで自由な道徳社会を築き上げたものだ。性的関係を持つのに婚姻を結ぶ必要もなく、社会から何らの批判もされなくなって久しい。同性愛も後ろのウェヌスで交わるのもオーケーだし、さらにそれらの行為を撮影した映像技術によって巨大なビジネスが成立している。

「黒いエロス」について

本書は「エロティシズム」「エロス」の持つ本来の意味と効用についてストレートに語った評論だ。

「黒い」とは色を指す。黒の反対は白であるが、人種的な話ではなくて精神を現している。つまり白は天国、黒は地獄。チベット仏教の静観仏と憤怒仏ほど異なる解釈である。暗黒と光の違いである。

エロスは暗黒の領土に属するものであり、一切の光を嫌う。ウィリアム・ブレイクの箴言に「フクロウは全てのものが白くあることを望んだ、カラスは全てのものが黒くあることを望んだ」とある。

昨今の最新鋭のオカズとしてはVRによるAVや成人向けゲーム、アンドロイドやAIの発明など相変わらずめざましい。しかしマンディアルグに言わせるとそれらの属するであろう精神は、エロティシズムと対極にあるものであり、全く関係がないらしい。

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